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水分補給②〜パフォーマンスの低下を防ぐために〜

2019/07/16

梅雨に入り、雨の日が多くなってきました。

ジメジメと蒸し暑い日が続きます。

台風も接近しているみたいなので、注意が必要ですね。

 

そして、高校野球では、来月から多くの地域で甲子園に向けての戦いが始まります。

私も12年前、初戦の相手はどこなんだろうとドキドキしたのを覚えています。

この時期はコンディションを整えることに集中しつつ、

私生活から怪我には細心の注意を払っていきましょう。

 

さて、前回は体内における水分の働きを中心にまとめてみました。

本日は、アスリートにおける水分補給の意義について考えてみたいと思います。

 

アスリートにおける水分補給の意義

アスリートにとって、水分補給は「生きていくため」・「体を守るため」という目的に加えて、

「パフォーマンスの低下を予防し、勝利につなげる」という重要な意味を持ちます。

 

健康に楽しく!

もちろん、人生において、とても大切なことですが、アスリートに求められることは、

やはり、結果ではないでしょうか。

 

最大限のパフォーマンスを発揮するためには、水分補給は必要不可欠です。

もちろん、効果的な水分補給ができるか or できないかは結果に大きく影響しますが、

知っているか or 知らないかでも結果は変わってくるのではないでしょうか。

どのような競技においても、水分補給は必要なスキルのひとつなのではないでしょうか。

 

 

◎アスリートの水分補給の目的

  1. 体温調節をして、熱中症の予防をする。
  2. 汗で失われた水分と電解質の補給により、脱水を予防する。

水分補給には、いろいろな目的がありますが、

その中でも、体温調節は非常に重要な意味を持ちます。

体温は上がりすぎても、また下がりすぎても、パフォーマンスの低下は避けられません。

それだけでなく、体温の上昇は、時には命にも危険を及ぼします。

 

さらに、長時間の運動によって大量の発汗が予想されるアスリートは、

水分不足による脱水のリスクもあります。

脱水の状態では、コンディションの悪化につながり、やはりパフォーマンスの低下は避けられません。

 

体温調節脱水予防

アスリートの水分補給において、この2つは重要な役割を果たし、

最大限のパフォーマンスを発揮する上では、必要不可欠です。

 

パフォーマンスに影響する体温調節について

正常な体温には個人差があり、年齢や行動、体質、生活習慣によっても変わってきます。

また、体の部位によっても温度は違います。

 

例えば、体温は外部より内部の深部体温の方が高いです。

私たちがよく体温を測るときに使う、腋窩温(脇の下で体温を測る方法)は、平均36.5°Cですが、

直腸の温度は平均37.5°Cといわれています。

 

人間は恒温動物なので、外気温がいくら変化しても、体内は常に一定の温度になるように、

体熱の生産と放散を繰り返して、調節しています。

 

* 体熱の生産→基礎代謝や筋肉運動 etc

* 体熱の放散→放射・空気への伝導と対流・蒸発 etc

 

炎天下で長時間運動するアスリートは、その他にも、とても多くの要因が体温に影響を与えます。

(例) 外でのランニング

IMG_9786

新版 コンディショニングのスポーツ栄養学 参照

 

体温を上昇させる要因

  • 太陽からの放射
  • 気温・湿度・風・気圧
  • 地面の放射熱や伝導
  • 筋肉の収縮による熱産生 etc

体温を低下させる要因

  • 呼吸
  • 発汗
  • 放射
  • 空気への伝導と対流 etc

外に限らず、室内に置いても様々な要因が体温に影響しています。

 

体温調節の仕組み

体温調節

生理検査アティテュード 参照

 

人は2つの温熱を感じる受容器を持っています。

ひとつは、皮膚の温度受容器です。

体の表面の温熱を感じて体温中枢に伝えます。

 

もうひとつは、深部の温度受容器です。

体温を感知する受容器で温度感受性ニューロンが体温の上昇低下を感知して、それを温熱中枢に伝えます。

この温ニューローンは全視床下部・脳幹・脊髄などにあります。

 

例えば、体温が上昇すると、皮膚表面にある毛細血管が広がって血流を多くし、汗を出して呼吸を激しくしたりして、

放熱を積極的に行います。

 

反対に体温が下がると皮膚表面にある毛細血管が細めになって血流を制限し、

鳥肌が立って表面積を少なくして、放熱をより制限します。

また、身震いで筋肉を強制的に振動させたり、ホルモンなどが褐色細胞に働きかけたり、

排尿によって体内の水分を減らしたりして、熱を発生させます。

 

熱中症とは?

熱中症とは、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、

体温の調節機能が働かくなったりして、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などの

さまざまな症状を起こす病気のこと。

 

熱中症は主に次の4つに分類されます。

  1. 熱失神
  2. 熱痙攣
  3. 熱疲労
  4. 熱射病

1.熱失神

皮膚血管の拡張により、血圧が低下し、

脳への血流が悪くなることによって起こります。

 

症状の特徴としては以下のものがあります。

  • めまい
  • 失神
  • 顔面蒼白
  • 速くて弱い脈 etc

2.熱痙攣

多量の発汗により、水や電解質を喪失することによって

筋肉の痙攣が起こります。

 

症状の特徴としては以下のものがあります。

  • 筋肉痛
  • 手足がつる
  • 筋肉の痙攣 etc

3.熱疲労

脱水による体温上昇と脱力。

熱射病の前段階の状態です。

 

症状の特徴としては以下のものがあります。

  • 全身倦怠感
  • 悪心・嘔吐
  • 頭痛
  • 集中力や判断力の低下 etc

 

熱失神・熱痙攣・熱疲労になってしまったら、

速やかに、涼しい場所で安静し、水分電解質を補給することが大切です。

 

4.熱射病

意識障害や体温40.5°C以上・乾燥した皮膚などが特徴で、温度中枢機能が破綻し、

体温上昇による循環・呼吸中枢の失調をみます。

体温が41°Cを超えると、細胞破壊が起こり、全身の臓器の機能不全に至ります。

熱痙攣・熱疲労の症状を呈した後、強い意識障害・脳浮腫に陥ります。

 

症状の特徴としては以下のものがあります。

  • 体温が高い。
  • 言動がおかしい。
  • 意識障害
  • ふらつき
  • 呼びかけに対しての鈍い反応  etc

とにかく、いち早く冷却することが必要となってきます。

 

スポーツ活動中の熱中症予防8ケ条
  1. 知って防ごう熱中症
  2. あわてるな、されど急ごう救急処置
  3. 暑い時、無理な運動は事故のもと
  4. 急な暑さは要注意
  5. 失った水と塩分を取り戻そう
  6. 体重で知ろう健康と汗の量
  7. 薄着ルックでさわやかに
  8. 体調不良は事故のもとである

日本体育協会では「熱中症予防8カ条」としてまとめ、熱中症事故をなくすための呼びかけを行っています。

 

水分補給 イラスト

 

 

 

 

 

パフォーマンス低下につながる脱水について

体内で脱水が起こる可能性があるのは、激しい運動後や暑熱環境下作業・発熱などによる

多量の発汗下痢・利尿の促進・出血多量・水分摂取不足・アルコールの多量摂取などが考えられます。

 

体内で脱水が起こると体は口の中を渇かしたり、唾液の分泌を減らしたりして、のどを渇かして水分を要求します。

水分が不足すると血液が濃縮され、血液の流れが悪くなることによって、循環器疾患を引き起こしやすくなるので、

大量に汗をかく運動前後には、十分に水分を補給し、体内水分量が低下しないように注意することが必要です。

 

脱水をすると運動能力は下がる

運動により大量に発汗し、脱水を起こすと運動能力が低下します。

 

*症状と運動能力から見た水分喪失度の予測

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木村修一, 小林修平監訳:最新栄養学第7版.  Chapter 10, 水分, pp96-105, 建帛社, 1997

 

症状の起き方、重症度、強さは実際には、運動強度、体力レベル、適応度、気温、相対湿度によって異なりますが、

水分低下度が大きくなれば、なるほど運動能力が落ちることがわかります。

 

*暑熱環境下での歩行運動に及ぼす水分摂取の効果

IMG_9812

青木純一郎:スポーツと水分補給. 最新医学 43 pp2190-2194 1988

 

この図は暑熱下における歩行運動中の水分摂取の効果を調べたものです。

結果、最も体温上昇を抑制したのは、発汗量と同じ量の水分を摂取した群であり、最も早く体温上昇した群は水分補給なし群でした。

 

適切な水分補給が体温の上昇を抑え、コンディションを維持することに有効なことがわかります。

また、水分をただ自由に好きなだけ飲むよりも、発汗量と同じだけの水分を摂取した群の方が体温の上昇を最も抑制しました。

つまり、水分は多すぎても少なすぎでもなく、人それぞれ適量があり、適量がパフォーマンスを維持するポイントだということです。

 

 

運動時に必要な水分補給の目安量

運動の種目や強度などによっても変わってきますが、一般に水分補給の目安量は、1日の水分損失量に等しく、

成人の場合、体重の4%前後です。

体重70kgの男性では、少なくとも1日あたり、2.5ℓ程度の水分が必要です。

 

また、消費エネルギー1000kcalあたり1ℓの水分補給が一般的に推奨されています。

 

種目によっても変わってきますが、

競技前250~500mℓ

競技中1時間あたり500〜1000mℓの水分をこまめに分けて摂取することをおすすめします。

1回あたりの摂取量は200〜300mℓでだいたいコップ1杯分を目安にするとよいでしょう。

 

水分補給が十分にできているか調べてみよう

水分補給が十分にできているか調べる方法は、尿の色と量を調べることです。

尿の色が濃く、量が少ない場合は、水分が不足しています。

尿の色が薄い黄色で、尿量も普通であれば、水の出納バランスはちょうどいいと判断することができます。

 

また、運動前後の体重を測ることで適正な補給量もおおよそでわかるので、

1度練習前と練習後、試合前と試合後などで体重を測ってみることをおすすめします。

 

体重の2%の減少で運動能力の低下がみられるといわれています。

のどの渇きが顕著にみられ、軽い脱水症の状態です。

体重の3%の減少では、のどの渇き以外にも、体の不調が現れ、中程度の脱水症の状態です。

 

余談ですが、1週間に4%以上の体重の減少がみられる時も、脱水症を疑います。

ダイエット時などは注意が必要です。

 

脱水症のサインとして5つ紹介しておきたいと思います。

  1. 体重減少
  2. 体温上昇
  3. 中枢神経の異常
  4. 消化機能の異常
  5. 神経・筋機能の異常

 

水分補給は先手必勝です。

のどが渇いてからでは遅いということを忘れないでください。

 

アスリートにとって水分補給は、最大限のパフォーマンスをする上での必要なスキルのひとつ。

自分にあった水分補給の仕方を身につけることが、試合で結果を残すことにつながるのではないでしょうか。

次回、水分補給の仕方や飲み物について、まとめてみますので参考にしていただければと思います。
水分補給③〜パフォーマンスの低下を防ぐために〜 - ほりさんの食選択応援Blog

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