みそソムリエ

みそソムリエが語る 〜奥深い味噌の世界〜

2020/01/23

先日、熊本で行われた、みそソムリエ認定講座に

参加させていただきました。

この講座は、みそのスペシャリストとして、

みその文化の伝道師の育成を目的に、始まりました。

毎年、受講者も増え、みそに携わる職業の方だけでなく、

一般の方も参加されています。

 

昔から、味噌汁が好きだったことや、

味噌汁のお話をよくさせていただくので、

今回、もっと、みそのことを知りたいと思い、

受講させていただきました。

(あと熊本にも行きたかった。)

 

今後は、管理栄養士として、

そして、みそソムリエとして、

みその魅力を多くの方々に伝えていきたいです。

日本だけでなく、世界にも発信できたらいいな。

 

今日は、みその歴史をご紹介します。

 

奥深いみその世界

みなさん、みそのことはどれくらいご存知ですか?

みそといえば、味噌汁。

鯖の味噌煮。

そのような、イメージの方も多いのではないでしょうか。

 

みその歴史は、非常に長く、

全国各地で、数多くの種類のみそがあります。

地域ごとに、原料・味・色・香りなどは、全く違います。

 

みそ工場さんなどでは、温度や時間・材料など、

みそを作る環境を細かく管理し、

品質の高いみそを継続的に、提供しています。

 

しかし、みそは、熟成・発酵など、

菌の力を借りて作られます。

 

つまり、みそを手作りで作った場合、

同じ材料・同じ分量で作っても、

人が持つ常在菌は、人それぞれ、違うので、

作る人によって、完成したみそは、異なります。

唯一無二。

あなただけのみそを作ることができます。

 

近年、和食に注目が集まり、

日本だけでなく、海外でも、味噌が注目されています。

そんな、みそはいつ頃から、人々に愛されているのでしょうか?

 

味噌

 

 

1000年以上の古い歴史! みその起源 醬

みその起源は、紀元前700年ごろまで遡ります。

中国の伝統的発酵食品である「醤」というものが、

みその源流となった発酵食品だとされています。

 

「醤」とは、塩のある状態で、発酵させた食品の名称で、

肉や魚・穀物・野菜などを使い、たくさんの製法と種類があります。

 

調味料を考えると、醤油や甜麺醤・豆板醤など、

「醤」という文字が使われたものは、たくさんあります。

「醤」をルーツとしたものは、日本だけでなく、アジア全体にあり、

私たちの暮らしに欠かせないものと言えるでしょう。

 

その後、701年に「未醤」(みしょう)という、

みその前身とされるもの記載が、「大宝律令」に記載されました。

この「みしょう」から、現在の「みそ」という名称が生まれました。

 

さらに、200年後の901に「日本三大実録」に、

初めて、「味噌」という記載があります。

これが、最も古い味噌の文字の記録とされています。

 

現在では、みそは、私たちの暮らしには欠かせない、

身近な存在ですが、この頃は、贈答品や貴重な調味料として、

扱われていたようです。(927年「延喜式」より)

 

 

革命的な食べ物! 「みそ汁」の登場。

鎌倉時代に入ると、すり鉢による

「すりみそ」が、一般的に広まりました。

 

この「すりみそ」は、お湯に溶けやすく、どんな具材とも、

相性が良いことから、「みそ汁」という調理法が、大ブレイク。

これが、質素な暮らしを基本としていた武家を中心に広まり、

その後、庶民にも伝わっていきました。

 

みそ汁によって、「1汁1菜」という

基本の食生活スタイルが確立されました。

現代では、形を変え、「1汁3菜」となっていますが、

日本の基本的な食事スタイルは、鎌倉時代から

受け継がれている伝統的なものなのです。

 

室町時代に、さらなるみそブーム! 汁かけ飯の登場。

室町時代には、大豆の栽培が奨励されたことや、

「汁かけ飯」が武家の常食となったことから、

さらに、みそは広まっていきました。

 

室町時代の「多聞院日記」という書物に発酵食品の記載があり、

その中に、「吉味噌」というものがあります。

この当時の吉味噌の仕込み規格の記載があり、

その規格は、なんと現代でも使われている仕込み規格と一緒だったのです。

つまり、500年以上も前から、現代のみそに似たものがあったということです。

 

武将が愛したみそ! みそは戦いに勝つための必需品。

戦国時代に入り、みそは、さらなる注目を浴び、

そして、大活躍しました。

 

私たちは、生きるために食事をします。

食べることができないということは、死を意味し、

戦いにおいても、負けを意味します。

 

大名たちは、他国に出陣し、戦をする際、

穀物などの食料は、現地で調達することはできたようです。

しかし、保存性や調味料などが、問題となったようです。

 

そんなとき、どちらも一気に解決してくれるものが、

みそだったのです。

 

簡単に味付けもできて、さらに、保存性も良い。

みそは、戦の必需品となりました。

 

大量にみそが必要となり、「御塩噌蔵」という大規模なみそ工場が誕生しました。

この日本初のみそ工場を設立したのが、

仙台の名武将、伊達政宗です。

 

全国各地においても、天才飢饉の対策や万が一の籠城戦に備えて、

みそは、重要な保存食料と認知され、生産が奨励されました。

こうして、みそは全国に広がっていきました。

 

伊達政宗

 

 

本格的なみその普及 調味料としてのなめみそ文化

江戸時代に入り、みそはすべての人の生活に欠かせない

調味料として、定着していきました。

 

時代も少しずつ、落ち着きを取り戻し、人口が増えていきました。

人口が増え、江戸や大坂を中心とした大都市が形成されていきました。

 

みそはもともと、ぞれぞれの家で手作りするものでした。

しかし、大都市の形成に伴い、資力も場所も人手もない町人が増え、

商品としての「みその需要」が大きく伸びました。

 

みそのブランド化も進み、みその商品化が起こりました。

高級料亭も開業され、みそ料理がどんどん広がっていきました。

 

料理人がみそを使った料理をどんどん開発し、みそに様々な素材を追加した

「なめみそ」が多く生み出され、みその文化も豊かになりました。

 

鯛みそや木の芽みそ・柚味噌・田楽みそなど、

なめみその文化は、現代でも継承されています。

 

大量生産の時代。 現代のみその進化

産業革命により、革命的な暮らしの変化が起きた明治時代。

電気の発明と加圧蒸気の発明は、みそにおいても、

革新的な変化を生み出しました。

 

モーターの登場により、

発行過程における大豆の組成形状に変化をもたらしました。

形状に変化により、発酵にも影響があったと考えられます。

 

また、機械による漉す工程も加わり、みその外観や品質に

大きな変化があったと言われています。

 

ボイラーが登場したことにより、

大豆の圧力蒸煮方が変わりました。

 

大幅な時間短縮により、生産性を向上させただけでなく、

みその色など、外観の変化をもたらしました。

こうして、現在でも、ポピュラーな「淡色みそ」の生産が可能となりました。

 

さらに、時代とともに進化は進み、

生産性が向上したことで、大量生産の時代となりました。

 

流通形態も変化し、かつての量り売りの販売形態が衰退し、

スーパーマーケットでの販売形態が主流となりました。

 

さらに、「商品としてのみそ」という価値が求められ、

みその品質基準が、「変色しづらく、再発酵しないみそ」のように、

見た目や売れるものという概念が優先的になりました。

 

みそは、発酵食品であるという点に価値があり、

菌の力によって形成される「生きた食べ物」である。

個人的には、このことが大切だと感じています。

 

しかし、「売れるもの」という点に重きを置きすぎると、

必要以上に見た目も重視されます。

出荷後の再発酵が「変質・変敗」とされ、販売不適とみなされます。

 

発酵を止めるためには、加熱して、酵素を失活させます。

確かに、食の安全という点では、良い点もあるかもしれませんが、

「生きた食べ物」であるという魅力は、半減してしまう気がしてなりません。

 

見た目も大切ですが、みそ本来の味や香り、

時間とともに、日々、変化していくという点も体感してもらいたいです。

ぜひ、味噌の専門店に足を運んでみてください。

今までに出会ったことがない、素晴らしいみそが待っています。

 

現代の進化。 だし入りみその登場。

昭和50年代後半から、平成の初頭にかけて、

「だし入りみそブーム」が起こりました。

これが、また便利。

 

お湯を入れたら、簡単に味噌汁ができます。

料理が苦手な方でも、おいしい味噌汁が作ることができます。

 

しかし、だし入りのみそは、

だしのうま味を最大限発揮するために、

みそを一旦、高温で加熱します。

みその菌があると、うま味の成分が分解され、

調味料の効きがあまりよくないからです。

 

加熱し、酵素を失活させるので、

だし入りみそは、

本来の味噌が持つもとの特性とは、大きく異なります。

 

そのほかにも、「みそ=みそ汁」

「みそは、みそ汁を作るもの」という

イメージを消費者に強く抱かせることにもつながりました。

 

「みそ市場の維持拡大」という大きなメリットという反面、

多用の活用という面では、課題も残りました。

 

インスタント味噌汁の技術向上

かつては、粉のインスタント味噌汁が主流でしたが、

昭和60年代にだし入りみその技術を応用した、

生味噌タイプのインスタント味噌汁が誕生しました。

 

フリーズドライの乾燥技術も進化し、

現在のインスタント味噌汁のは、あまり加熱されていない、

みそ本来の香りを楽しめるものが多くなりました。

 

個人的には、某コンビニの長ネギの味噌汁をよくいただきます。

このおいしさを知ってから、お酒を飲んだ後の締めが

カップヌードルから、味噌汁へと変化しました。

 

締めのラーメンは、おいしい。

心の栄養は満タン。

しかし、本当に必要ですか?

 

食事は、「量×時間×頻度」。

 

ご褒美は、自分の体と相談しながら、

取り入れていきましょう。

 

これからのみその未来

日本の人口は、平成20年にピークを迎え、

毎年、減少を続けています。

人口の減少は、私たちの生活にも影響を与えるでしょう。

生産量や消費量にも変化をもたらします。

 

日本人のみその消費量でいえば、1970年ごろがピークでした。

2010年の消費量は、1970年の半分です。

伝統的なみそ文化は、この先も伝えていくべきものです。

 

海外の輸出量は2001年ごろから、増加し、

現在では、10万トンを超えました。

 

日本が誇る優れた伝統食品であるみそには、

まだまだ可能性があります。

健康の観点からも、発酵食品には、

まだまだ秘められたパワーがあると考えています。

 

この素晴らしいみそ文化を日本から海外へ。

まずは、日本のみなさんにも、もう1度、知っていただきたいです。

次回は、みその種類について、紹介します。

みそソムリエが教える 〜みその種類〜  - ほりさんの食選択応援Blog

 

-みそソムリエ