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茨城県常総市&北海道斜里郡小清水町の農家さんで春菊収穫を行う管理栄養士が教える春菊の栄養

2024/10/11

魅力的な春菊の「栄養」と「効能」について

2024年の4月から約1ヶ月、茨城県常総市にあるレタス・春菊農家さんのもとで、そして、現在は北海道斜里郡小清水町の農家さんのもとで春菊の収穫作業をさせていただいてます。そちらの農家さんに農業や野菜の魅力、そして、楽しさや時には大変さなど日々教えていただき、体感しております。
今日はそんな管理栄養士が今、個人的にとても興味がある「春菊」の栄養や魅力・レシピについて紹介します。

春菊の主な栄養成分について

春菊は、葉の切れ込み程度により、大葉種・中葉種・小葉種の3つに分類されます。日本では、中葉種の栽培が最も多く、さらに「摘み取り型」「株張り型」に分類されます。関東では、「摘み取り型」、関西・九州では「株張り型」を見かけることが多いのではないでしょうか?

大葉春菊 *北九州のご当地野菜で鍋旬菊とも呼ばれている。柔らかく、アクが少なく優しい味が特徴

摘み取り型の中葉春菊 *関東タイプと言われ、伸びた茎葉を順次摘み取って収穫する

株張り型の中葉春菊 *関西タイプと言われ、根元から収穫する

春菊は地中海沿岸が原産国で「キク科キク属」に分類される野菜です。冷涼な気候を好み春に種を蒔き5-7月に収穫するタイプと秋に種を蒔いて10-12月に収穫するタイプがあります。旬は冬とも言われ、特有の香りと歯触りが好まれる野菜です。鍋物やすき焼き、お浸し、和え物などに使われることが多いのではないでしょうか。

そんな春菊は、栄養満点で「β-カロテン」やビタミンAビタミンCビタミンKなどのビタミン類、そのほか、カルシウムマグネシウムカリウム、などのミネラル類も豊富に含まれます。健康や体づくりにも一押しの緑黄色野菜で、アクも少なく、葉も柔らかいのでナムルやサラダなど生で食べるのもおすすめです。

春菊は抗酸化作用が期待できるβ-カロテンがたっぷり

春菊の栄養成分の中で、特に注目したいのは、「β-カロテン」。この「β-カロテン」は、カロテノイドという色素の一種で体内でビタミンAに変換されます。にんじんやカボチャ、パセリ、バジルなどにも多く含まれます。にんじんのオレンジ色の正体はこのカロテンによるものです。

「β-カロテン」には、様々な効能が期待できます。特に「抗酸化作用による健康増進効果」が魅力的です。
その他、期待できる主な効果は次の通りです。
・皮膚や粘膜の健康維持
・視力の維持
・免疫力Up
・アンチエイジング
・がん予防

「β-カロテン」は、脂溶性の成分なので、油を使った調理と相性が良く、油と一緒に調理することで吸収率がUpします。「β-カロテン」の吸収率の観点から言えば、ごま油でさっと春菊を炒めたり、高温&短時間でサッと揚げたサクサクの天ぷらもおすすめです。

春菊の香り成分は私たちの健康の味方

春菊は、香りが特徴的な野菜でこの香りは、私たちの健康を手助けしてくれる可能性があります。この香りの主成分は「αピネン」「ペリルアルデヒド」などの精油成分です。「αピネン」はマツやヒノキ、スギなどの針葉樹に多く含まれ、副交感神経を整えリラックス効果が期待できるとされています。森林の香りをイメージしてみてください。とても癒されませんか?春菊にも同じ効果が期待できます。副交感神経を整えることで得られるメリットは多く、体のリラックス状態を促進し、心拍数や血圧の低下、消化器官の活動の増加につながります。体を回復させたり、疲労を取り除くためには、質の良い睡眠が必要不可欠ですが、睡眠の質を向上させるためにも、副交感神経を整えることは非常に大切です。交感神経や副交感神経などの自律神経系は私たちの意志では、コントロールできない部分もあるので、日常生活での運動や食事、睡眠など自分でコントロールできる部分からの改善は、健康の大きな手助けとなります。

「ペリルアルデヒド」は、シソにも含まれる成分で、強い抗菌作用防腐作用があり、食中毒の予防にも効果があるとされています。また、この香りによって、臭覚の神経を刺激し、胃酸の分泌を促進することで、食欲増進たんぱく質の消化の手助けとなります。消化をサポートすることは、胃腸を整えることにもつながり、睡眠の質の向上にもつながります。

春菊は、豊富な栄養成分からのアプローチだけでなく、香りからも質の良い睡眠につながる可能性があり、私たちの健康には魅力的な食べ物だと言えます。

春菊に豊富に含まれるビタミンとミネラルの効能

春菊は、先ほど述べたように、「ビタミンA」や「ビタミンC」・「ビタミンK」をはじめとするビタミン類や「」・「マグネシウム」・「カルシウム」・「カリウム」などのミネラル類も豊富です。

目の健康に欠かせないビタミンA

「ビタミンA」は脂溶性のビタミンで、目の網膜で光や色を感知する「ロドプシン」という物質の主な成分です。目の健康や皮膚・粘膜の健康維持、シミ・シワ、肌荒れなど、肌のトラブル防止、さらに、「免疫力Up」「アンチエイジング」に欠かせない栄養素の1つです。「ビタミンA」が不足すると、暗順応(明るい所から暗い所に入った時に暗さに慣れて周りが見えるようになる反応)が障害されて、暗い所や夜に目が見えにくくなる「夜盲症」が起こる可能性があります。逆に過剰に摂取すると、脂溶性のビタミンなので、肝臓などに蓄積され、頭痛や吐き気、肝機能障害などの過剰症の原因となります。ビタミンAの過剰症は特に薬剤やサプリメントなどの大量摂取によるものが主な原因となるので、食事からビタミンAの過剰症のリスクは低いとされています。ビタミンAの推定平均必要量は性別や年齢等で目安が違いますが、一般男性成人(18-29歳)で600μgRAE、30-49歳、50-64歳の男性で650μgRAEです。令和元年国民栄養・健康調査によると日本人のビタミンAの1日の摂取量の平均は、534.1μgRAEでした。ビタミンAが豊富に含まれるレバーを毎日大量に食べると、食事からの過剰症が起こる可能性は否定できませんが、基本的には、野菜等から、しっかりとビタミンAを摂取する意識を持つとよいと考えます。春菊はその助けとなるでしょう。

免疫力Upやストレスに負けない体を作るために必要なビタミンC

「ビタミンC」は、水溶性のビタミンで「ビタミンA」と同様に体内の活性酸素を除去する「抗酸化作用」を持ちます。がんや動脈硬化の防止、老化防止や疲労回復にもビタミンCが有効なのではないかとされています。また、ビタミンCの主な働きとして、毛細血管や歯、軟骨などを正常に保つなどが挙げられます。また、骨や腱などの結合タンパク質であるコラーゲンの生成にもビタミンCは必要不可欠で、不足すると血管が脆くなる壊血病の原因ともなり得ます。

その中でも特筆するべき働きは、「免疫力Up」「抗ストレス作用」なのではないでしょうか?「ビタミンC」は、体内に侵入したウイルスや細菌と戦う白血球やリンパ球に多く含まれています。「ビタミンC」を摂取することで血液中の白血球の働きを助けたり、リンパ球を元気にする作用があると考えられているため、「免疫力Up」につながるのではないかと考えられています。また、ビタミンCは上記で述べた通り、コラーゲンの生成に重要であり、コラーゲンは皮膚や粘膜を構成する重要なタンパク質です。丈夫で健康的な皮膚を作ることで病原体を体内に侵入することを防ぐことで免疫力Upにつながります。

また、私たちは日常生活において、様々なストレスにさらされます。このストレスに負けない体を作るためにも、ビタミンCは欠かせません。私たちは、ストレスを感じるとそれに負けないようにストレスと対抗する「コルチゾール」というホルモンの分泌量が増えます。この「コルチゾール」を合成する際に必要となるのがまさに「ビタミンC」なのです。ストレスで疲弊すると、ビタミンCの消費が激しくなります。ストレスに対抗するためにも、日頃からビタミンCの摂取を意識することは大切です。

水溶性のビタミンを効率よく摂取するための3つのポイント

①生でそのまま食べる
②毎日、朝、昼、夕とこまめに摂取する
③鮮度が良い野菜を選ぶ

水溶性のビタミンである「ビタミンC」は、「水や熱に弱い」という特徴があります。そのため、無駄なく摂取するためには、生で食べることがおすすめです。水に晒す時間が長ければ長いほど、また高温で加熱する時間が長ければ長いほど、「ビタミンC」の含有量は減少します。そのため、効率よく「ビタミンC」を摂取するためには、野菜や果物を生で皮ごと食べるのがおすすめです。春菊は、葉も柔らかく、えぐみも少ないので、生のサラダやナムルにしても美味しく食べることができるでしょう。汁物にすれば、溶け出したビタミンもそのまま摂取できるので、スープや味噌汁も割と効率は良いかもしれません。

また、水溶性のビタミンは、過剰に摂取すると尿から排出されます。そのため、過剰症の心配はありませんが、1度に大量に摂取しても、無駄となるということです。そうであれば、朝、昼、夕とこまめに「ビタミンC」を摂取し、毎日摂取することで、体内に効率よく留まるのではないかと考えられます。

「ビタミンC」は野菜や果物などに含まれますが、残念ながら、野菜や果物の「ビタミンC」は収穫直後から、だんだんと減少していきます。野菜は収穫後も呼吸をしています。その際に「糖分」や「ビタミンC」などの栄養分を分解していきます。また、保管温度によっても、ビタミンの減少率は変わり、葉物野菜のビタミンAは収穫後、室温(22℃)で4日経過すると75%減少し、「ビタミンC」は、室温(22℃)に24時間置くだけで50%減少するとされています。(有機ネット千葉H P 参照)もし、8-10℃で保存した場合は、24時間後の「ビタミンC」の損失が10-30%となります。葉物野菜は0-5℃が保存に適した温度とされているので、保管状態にも気をつけたいですね。したがって、効率よくビタミンCを摂取するには、鮮度の良い野菜や果物を選ぶこことが大切なので、お住まいの地域に近い生産地の野菜を選び、買ったらできるだけ早く食べることがおすすめです。大変かもしれませんが、野菜や果物はこまめに買う方がベターでしょう。

ほうれん草や小松菜と匹敵するほど、春菊にはビタミンKや葉酸、鉄が含まれる

栄養豊富な野菜は?と質問すると、ほうれん草や小松菜、ピーマン、トマト、にんじんをイメージされる方が多いのではないでしょうか?実は、春菊もほうれん草や小松菜に匹敵するくらい、「ビタミンK」や「葉酸」・「鉄」・「カリウム」・「カルシウム」が含まれます。
それぞれの栄養素に大切な役割と働きが期待されますが、代表的な働きは以下の通りです。

「ビタミンK」→血液凝固作用&骨の健康維持
「鉄」→酸素や栄養素の運搬、血液の健康維持、貧血予防
「カリウム」→細胞の浸透圧のや体液のPHバランス維持、筋肉の正常な収縮、むくみ予防
「カルシウム」→骨や歯の形成、血液凝固、筋肉の収縮、神経の興奮抑制

私は、スポーツ選手を主にサポートしていますが、筋肉の収縮(体の痙攣にかかわる)、また発汗による影響、血液の健康(鉄欠乏性貧血etc.)など、パフォーマンスUpパフォーマンス維持には必要不可欠なミネラルの摂取に関する話をする機会がとても多いです。ミネラルは微量栄養素と呼ばれ、わずかな摂取でも効果を発揮する非常に重要な栄養素です。春菊には、そのようなミネラルも多く含まれることから、健康増進体づくりアスリートのパフォーマンスUpなど、様々なシチュエーションで役立つ野菜であり、魅力的な野菜だと感じています。

春菊はすごいぞ!!

春菊はハサミでパチパチと収穫していきます。ずっと、しゃがんだり、座った姿勢で1時間以上収穫するので、人によっては、ハードかもしれません。慣れると1時間もかからずして、5kg以上収穫できるようになります。

春菊を使ってバランスの良い食生活をしよう

春菊は特にビタミンやミネラルが豊富な野菜です。特有の香りをもち、生でも加熱しても美味しく食べることができる野菜の1つです。栄養のプロから見ても、様々な食の目的に合わせて、万能に対応できる優れた野菜だと感じています。

バランスの良い食生活については、別の記事でも述べていますが、「5大栄養素」と呼ばれる栄養素を過不足なく摂取することが必要となります。(こちらの記事も参考にしてみてください)https://hori3.com/archives/2957

食材に含まれる栄養素はそれぞれ異なり、調理法や食材の組み合わせによっては、吸収率がUpする組み合わせもあれば、逆に損失してしまう栄養素もあります。食事の目的に合わせて、どの栄養素の摂取をターゲットとするかを決め、私はメニューを考えます。

例えば、「春菊」を使うとするなら、ビタミンやミネラルが非常に豊富な食材なので、主菜で「肉・魚・卵・大豆製品」と「春菊」などの野菜を組み合わせ「タンパク質の摂取をメインに+ビタミン&ミネラルを増強」という使い方もできます。また、春菊にも含まれる「ビタミンC」は、「ヘム鉄(動物性食品に多く含まれる鉄分)」の吸収率を上げる働きもあるので、料理の仕上げにさっと春菊を加えることも理にかなってます。動物性の食品とも相性が良いでしょう。

ビタミンやミネラルの摂取をターゲットとするなら、副菜で「春菊」をメインに使います。水溶性のビタミンやミネラルを摂取することを意識するなら、「生の春菊」を使ってサラダやナムルにしても良いでしょう。アスリートのみなさんには、「たんぱく質+野菜」の組み合わせである、「アスリートの副菜」をおすすめします。例えば、春菊のサラダ、ナムルにしらすやハム、ちくわ、カニカマ、蒸し鶏、エビやたこ、いかなどの魚介類を混ぜても良いでしょう。味付けも、その日の気分に合わせて、わさびや柚子胡椒、豆板醤、唐からしなどとさまざまなアレンジが可能です。

農家さん直伝! 春菊粥のすすめ

茨城の農家さんに春菊の美味しい食べ方を教わりました。定番のお浸しはもちろん、私が感動したのは「春菊粥」です。

鶏がらスープの素をベースにした汁に、炊いたごはん、刻んだたけのこ、溶き卵を入れ、仕上げに刻んだ春菊とごま油を入れて完成。優しい味わいで、食欲がない朝食にも良いですし、消化の負担が少ないので、遅くなった夕食にもおすすめです。この春菊粥のすごい点は、必要な栄養素が全て含まれていること。「ごはんの糖質、卵のたんぱく質、春菊のビタミン、ミネラル、ごま油の脂質。」さらに、春菊を最後にさっと入れるの栄養素の損失も少なく、水に溶けたとしても、汁ごと食べることができるので、完璧な料理だと思います。

私はさらに、たんぱく質を強化した「鶏春菊粥」をよく作ります。手羽先をコトコトと煮た鶏ベースの汁にごはんと溶き卵、たけのこ、きのこ類を加えます。「糖質+たんぱく質」の組み合わせ&「水分」もしっかり摂取できるので、トレーニング後(特に夜遅くなった時)のリカバリーにもおすすめの1品です。もちろん、朝食にもおすすめです。ぜひ、お試しあれ!!

春菊は栄養満点で様々な場面で活躍する最強野菜だと思います。日常生活で春菊をうまく活用し、健康維持、体づくり、パフォーマンスUpに生かしてください。

知床連峰も一望できる12ヘクタールの巨大な畑。北海道の畑は広くてのどか。世界自然遺産の知床の風を感じながら育った春菊。冷涼で雨も比較的少ない北海道斜里郡小清水町は春菊の栽培にもうってつけとのこと。

早朝の畑には、野生の鹿が現れる。ツノも立派でオーラがすごかった。笑 野生の熊さんもごくたまに来るらしい。

お団子やお煎餅も有名な常総市。有名なスナック菓子のうまい棒を製造している本社も常総市にある。関東近郊で輸送にも便利で、特に春菊のような軽量野菜の栽培に向いているそう。春菊は冷涼な気候を好むが、暑さにも寒さにもそれなりに耐えられ、雪も積もらない、また雨の日も少ない常総市の冬なら十分越冬性があるみたい。4月に常総市の農家さんのところにお伺いさせていただいたが、春菊がもう元気。収穫したと思っても、すぐに伸びてきて、収穫が追いつかない。笑 最後の方は黄色い綺麗な花が咲いてました。欧米では、春菊は特有の香りが不人気で観賞用として栽培されるらしい。栄養満点なのにもったいない。

本日のまとめ

  1. 春菊は、抗酸化作用が高い「β-カロテン」が豊富
  2. 春菊は、副交感神経を整えるなど、健康増進が期待できる特有の香りを持つ
  3. 春菊は、ビタミンAを始め、ビタミン・ミネラルが豊富で、その量はほうれん草や小松菜にも匹敵する
  4. 春菊は、主菜でも副菜でも手軽に使え、効果的な栄養摂取に役立つ有能な野菜
  5. 春菊粥で5大栄養素すべて賄える

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