「都会で疲れた心と体を整える。農業×健康の新しいライフスタイル」〜農業が健康と親和性が高い7つの理由〜
目次
なぜ今、農業と健康が注目されているのか?
現代は健康志向の高まりと同時に、食の安全や自然とのつながりを重視する人が増えているように思います。そんな中、農業はただの「食料供給手段」ではなく、健康を支える重要な存在として再評価されても良いのではないでしょうか。農薬や添加物への不安、ストレス社会における心身のケアなど、私たちの暮らしに直結する問題と向き合う中で、「どう作られたか」「どこで育ったか」が食の選択基準になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際に農家さんをめぐって体験したこと。また、管理栄養士としての栄養面のこと。また消費者として感じること。この3つの視点で考えてみると、それぞれの事情があり、お互いに歩み寄ることは必要ですが、農業と健康、この2つの視点を重ねることで、私たちはより良い生き方を見つけることができるかもしれないと考えています。

ここからは、農業が健康にポジティブな影響を与える6つの可能性を紹介します。
1. 畑から始まる健康づくり
健康な体をつくるには、“何をいつ、どれくらい食べるか”が大切です。そしてその食べ物が「どう育ったか」にも目を向けてみると、健康づくりは畑から始まっていることに気づくのではないでしょうか。無農薬や有機栽培で育てられた野菜は、安心して食べられるという心のゆとりも与えてくれます。さらに、地元で採れた旬の野菜を食卓に取り入れれば、自然のリズムに寄り添った暮らしができるようになるのではないでしょうか。
一方で、慣行農業にも大切な役割があります。安定した収穫量や流通の効率化など、私たちが一年中さまざまな野菜を手に入れられるのは、こうした農業の工夫があってこそ。どちらが良い・悪いではなく、それぞれの特長を知ったうえで、自分に合った食の選び方をしていくことが大切です。
たとえば、週末に直売所に行ってみたり、ベランダでミニトマトを育ててみたり。そんな小さなきっかけが、食べ物への愛着や楽しさにつながっていきます。土のにおいや、野菜の成長を感じる時間は、なんだか心までほっとさせてくれるんですよね。食べることがもっと身近に、大切に思えるようになります。
日々のごはんをちょっと見直すことが、未来の自分へのプレゼント。その第一歩は、畑にちょっとだけ目を向けてみることかもしれません。

成田市の有機農家さんのオクラ。1日収穫時期を逃すだけで、規格外となり売り物になりません。物凄い成長力!見習いたいものです。暑い中、地面を這いつくばりながら収穫しました。笑
2. 新鮮な野菜が心と体に効く理由
採れたての野菜は、1番栄養素が豊富な場合が多いです。(もちろん例外もあり。)特にビタミンCや葉酸などは時間経過で急速に減少してしまうため、「新鮮さ」は栄養素を効率よく摂取して、健康を維持することにおいてとても大切な要素です。また、地元の農家さんから直接野菜を購入したり、自分で育てたものを食べることは、心にもポジティブな影響を与えてくれます。食材の背景を知ることで、食べる喜びがぐんと深まり、食卓がより豊かであたたかなものになります。新鮮な野菜は、身体の栄養源であると同時に、日常の幸せを感じさせてくれる存在でもあるのです。
たとえば、朝採れの野菜を使ってつくるシンプルなサラダや味噌汁は、それだけで特別なおいしさがあると感じるのは私だけでしょうか。「あ、この野菜は○○さんの畑で育ったんだな」と思いながら口に運ぶと、食事の時間がちょっと楽しくなったり、感謝の気持ちが芽生えたりするんです。そんな気持ちの変化が、日々の生活に小さな豊かさを運んできてくれるのではないでしょうか。
家庭菜園やベランダでのプチ栽培も、気軽に始められる方法のひとつ。水やりをしたり、芽が出たのを喜んだり、収穫の喜びを感じたり…そんなひとつひとつの体験が、食べることへの意識をぐっと変えてくれます。スーパーで手に取る野菜にもちょっと違った目線を向けられるようになり、食と向き合う気持ちが深まっていくんですね。
食べ物と丁寧につき合うことは、体の健康だけでなく、心の健康にもつながります。野菜の“新鮮さ”を通して得られるのは、栄養だけじゃない。自然とのつながりや、食べる楽しみ、誰かと分かち合ううれしさ――そんな目には見えない「豊かさ」こそが、私たちの暮らしをじんわり支えてくれているのかもしれません。

3. 土に触れるだけでストレスが減る?農作業のメンタルヘルス効果
最近の研究では、土に触れることがストレス軽減やメンタルヘルスの向上につながることが分かってきました。農作業中の適度な運動や自然の中での時間が、心を穏やかにし、幸福感を高めるホルモンの分泌を促します。特に注目されているのが「マイコバクテリウム・バッカエ」という土壌細菌で、これが脳のセロトニンレベルに良い影響を与えるとも言われています。日々のストレスに悩む現代人にとって、農作業は“癒し”としての価値も持つのです。週末だけの家庭菜園でも、効果は十分に期待できます。
実際に、小さな取り組みでも心の変化を感じている人は多くいます。たとえば、毎朝ベランダでミニトマトに水をあげるのを日課にしている方は、「ほんの数分だけど、植物と向き合うこの時間が心を落ち着かせてくれる」と話します。仕事や家事の前に、静かに自然と向き合う時間があるだけで、1日の始まりが少しやさしくなるそうです。
また、週末だけ市民農園で野菜を育てている会社員の方もいます。平日はパソコンに向かうことが多い中、土をいじって無心になれる農作業が、ストレス発散と心のリセットに役立っているそうです。「収穫した野菜を食べる喜びもあるし、心地よい疲労感が最高のリフレッシュになる」とのこと。
さらに、小さなお子さんと一緒に家庭菜園を楽しむご家庭では、野菜を育てる過程が親子の会話やふれあいのきっかけになっています。土に触れながら、成長を一緒に喜んだり、自然の仕組みを学んだりする時間は、親子の絆を深める大切なひとときにもなっているようです。
このように、農作業や土いじりは、体の健康だけでなく、心にもやさしい効果をもたらしてくれます。何気ない毎日の中に「育てる」「触れる」「味わう」といった自然との小さなつながりを取り入れてみると、心が少し軽くなり、暮らしにほっとする余白が生まれるのではないでしょうか。

4. 食卓の安全は畑から:オーガニック野菜と健康の関係
オーガニック(有機)野菜は、化学肥料や農薬を極力使わずに育てられた農作物です。これにより、人体への有害物質の摂取リスクを減らすことができると言われています。さらに、土壌環境や生物多様性を守る農法を採用することで、持続可能な農業が実現され、環境保全にもつながります。健康を意識するうえで、安心して食べられるものを選ぶことは基本。スーパーで「どの産地? どんな栽培方法?」と考えることが、よりよい健康習慣への第一歩になります。
最近では、「有機JASマーク」がついた野菜も増え、手に取りやすくなってきました。「今日はこの有機にんじんでスープを作ろうかな」と、献立を考えるのも楽しくなります。少しずつ意識するだけで、体にも心にもやさしい食生活が、自然と習慣になっていくはずです。
ただ、有機農業にはどうしても手間やコストがかかりやすく、価格が高くなったり、安定した収穫が難しかったりと、農家さんの負担も少なくありません。加えて、需要がまだ限定的なため、有機だけで生計を立てるのが難しいという声もよく聞きます。政府は「みどりの食料システム戦略」において、2050年までに有機農業の取組面積を全耕地面積の25%(100万ha)に拡大する目標を掲げていますが、2022年時点で、有機農業の取組面積は約3万300haで、全耕地面積の約0.7%です。つまり、どんなに多く見積もっても、有機農業に取り組む農家の割合も全体の1%未満と推測されます。栽培技術には自信があっても、販路の拡大が難しいと話してくれた有機農家さんも多数いらっしゃいました。野菜は収穫しても、売れなければ、農家さんの手元にはお金は入りません。収益を出すために、人件費を削り、結果的に全ての作業を自分一人で行い、朝4時から夜23時まで働いている農家さんにも出会いました。
一方、私たちが日常的に口にしている野菜の多くを育ててくれているのが、慣行農業の農家さんたちです。農薬や化学肥料を適切に使いながら、病害虫や気候の変動と闘い、安定した量と価格で野菜を届けてくれています。大量に必要とされる学校給食や病院、飲食店などにとっても、慣行栽培の存在は欠かせません。限られた土地と時間のなかで効率的においしい野菜をつくるために、日々技術と工夫を重ねているのです。
すべてを有機に切り替えるのは現実的ではなく、どちらの農法にも長所と課題があります。だからこそ、消費者である私たちが「いろんな農家さんが頑張ってくれているんだな」と背景に目を向けることが、より豊かで持続可能な食の未来につながっていくのではないでしょうか。
また、経済的なゆとりも健康には欠かせません。どんなに体に良い食べ物でも、無理をして家計を圧迫してしまっては本末転倒。体にいいものを“無理なく、続けられる範囲で”取り入れることが大切です。有機野菜と慣行野菜を上手に使い分けたり、旬の野菜を選んで節約したり。そんな日々の小さな工夫が、心にも体にもやさしい暮らしをつくってくれるはずです。

形がおかしな野菜もありますが、栄養価は変わりません。なのに、売り物にならない。捨てられてしまうのはもったいないですね。
5. 栄養たっぷりの野菜を選ぶには?農法が左右する健康価値
一見どれも同じように見える野菜でも、その栽培方法によって栄養価や味には違いがあります。有機農法や自然栽培では、土の中にいる微生物たちが野菜の栄養吸収を助けてくれるため、じっくり育ち、味も濃くなることが多いです。たとえば、有機トマトはゆっくり育つぶんストレスがかかり、リコピンやポリフェノールといった抗酸化物質が多くなる傾向があります。香りも濃く、「トマトってこんなに甘かったんだ」と驚く人も。
一方で、化学肥料を使った慣行農業でも、栄養価が高まることがあります。たとえば、ホウレンソウやレタスといった葉物野菜は、窒素肥料の働きでビタミンCの含有量が高くなるケースも報告されています。また、にんじんの糖度も、肥料の使い方やタイミングによって変わることがあるんです。
つまり「どっちが正しい」というよりも、それぞれの農法に良さがあり、野菜の種類や育て方によって向き不向きがあるということ。農法にちょっと目を向けて、「これはどんなふうに育てられたんだろう?」と考えるだけでも、食べ物の“中身”が見えてきて、選ぶ楽しさがぐっと広がります。たまには産直で話を聞いてみたり、ラベルをチェックしたりするだけでも、食卓がもっと豊かに感じられるようになりますよ。
さらに最近では、スーパーでも「栽培方法」「農家さんの顔写真つきラベル」「栄養の見える化」など、消費者にやさしい情報が増えてきました。全部を理解しなくても、「ちょっと気にしてみる」だけで、自分や家族の体にやさしい選択ができるようになるはずです。身近な野菜が、もっと信頼できるパートナーに感じられるかもしれませんね。

土地が広い畑がいくつもある場合、畑を行ったり来たりするのは大変です。特に、薄利多売の作物を栽培する場合は、数を収穫してなんぼです。なので、できるだけ、同じ栽培期間で同じ大きさに生育してくれた方が収穫が効率よく行うことができます。そういった理由からも、化学肥料や農薬を使う場合もあるそうです。プロテインやサプリメントに何か通ずるものがある気がしました。
6. 都市農業・家庭菜園で変わるライフスタイルと健康意識
都会の中でも農に触れる機会が増えています。ベランダでのプランター栽培や、シェアファーム、地域のコミュニティ菜園など、都市農業は健康的なライフスタイルへの入口として人気です。自分で育てた野菜を収穫して食べる体験は、達成感や満足感を生み、食べ物への感謝の気持ちも育ちます。また、自然との接点が増えることで、日々のストレスが和らぎ、心身のバランスも整います。忙しい現代人にこそ、土とつながる暮らしが必要なのかもしれません。
最近では、たとえば全国に広がる「シェア畑」では、手ぶらで通える貸し農園として人気を集めていますし、東京・練馬区では23区内にもかかわらず本格的な体験農園や直売所が盛んです。大阪・うめきたエリアでは、ビルの屋上を使った農園も登場し、仕事の合間に土いじりを楽しむオフィスワーカーの姿も。名古屋の東別院では、お寺の境内で開かれるオーガニックマーケットが人気で、都心にいながら地元農家さんと触れ合える機会も増えています。
マンションの屋上に菜園を設けたり、子どもと一緒にミニトマトを育ててみたり。ほんの小さな鉢植えでも、芽が出た瞬間のうれしさは格別。「育てる・食べる・感じる」このサイクルが、毎日の暮らしにちょっとした豊かさを運んできてくれるんです。
さらに、同じ畑をシェアする仲間との交流や、季節ごとの収穫祭などを通じて、自然と人とのつながりも広がっていきます。土をきっかけに笑顔が生まれ、食卓の会話も弾む。そんなあたたかな時間が、都会の生活にもたくさん増えていったら素敵ですよね。

私が住むさいたま市にも多くの市民農園やシェア畑のサービスがあります。実際のプロの農家さんや指導員の方のレクチャーも受けることができるみたいです。
🌿 まとめ:農業は、私たちの健康を育てるもう一つのチカラ
私たちの健康は、日々の食事からもつくられています。そしてその食べ物は、畑から生まれたものも多いはず。つまり、農業は私たちの健康づくりの土台ともいえる存在です。
どんな農法で育ったか、誰がどんな思いで作ったか――そういった背景に目を向けることで、「食」はただの栄養補給ではなく、心と体の両方を満たすものになります。有機野菜や地元の旬の野菜を取り入れることで、自然のリズムに寄り添った暮らしが始まり、結果的に免疫力や心の安定にもつながるかもしれません。
さらに、自分で野菜を育てる体験や、土に触れる時間は、メンタルヘルスやストレスの軽減にも良い影響があると言われています。農業には、私たちが思っている以上に、健やかな毎日を支えてくれる力があるのです。私も実際に、各地の農家さんを巡ったことで、心も体もリフレッシュでき、その影響は本業にもポジティブな影響を与えてます!(話題性抜群。笑 あいつは今どこにいるんだとよく聞かれます。)
健康のために何かを始めたいと思ったら、まずは「農」を含めた食べ物に少しだけ関心を向けてみてはいかがでしょうか? 身近な食材から、家庭菜園から、小さな一歩が、きっと未来の自分をやさしく支えてくれるのでしょう。
今後は、天塩町での畑の様子などをお伝えしていきたいと思います。(地方には可能性がたくさんありますよ!あなたが輝ける場所はいろんな所に眠ってます。)