【みそソムリエが語る】味噌の発酵と熟成の秘密|“生きた食べ物”の奥深さとは?
2025/04/14
こんにちは!スポーツ栄養士&みそソムリエのほりです。
前回は、日本に1000種類以上ある味噌のバリエーションをご紹介しましたが、 今回は「味噌が味噌である理由」、つまり発酵と熟成のメカニズムについてご紹介します!
味噌の魅力は、なんといっても“生きた食べ物”であること。 菌や微生物の力によって時間とともに風味が変わり、世界に一つだけの味噌ができあがります。
「味噌ってどうやってできてるの?」 「発酵って身体にいいって聞くけど、なぜ?」 そんな素朴な疑問をわかりやすく解説していきます◎
目次
味噌が味噌である所以|発酵と熟成の役割
味噌とは、大豆・麹・食塩を混ぜて発酵・熟成させたもの。 材料を混ぜただけでは、まだ“味噌”にはなりません。 時間をかけて発酵と熟成を経て、はじめて私たちが知る味噌になります。
その鍵を握るのが、「麹」— そして「酵素」や「微生物」の力です。
味噌づくりの3ステップ
味噌の変化は、大きく以下の3段階で進みます:
- 麹による分解(甘み・うま味のもと)
- 微生物による発酵(香り・コクの形成)
- 化学反応による熟成(色・深い味わい)
それぞれ、詳しく見ていきましょう!
① 麹による発酵|みその甘みの正体
麹菌の酵素が働いて、原料を分解していきます。
- デンプン → アミラーゼ → ブドウ糖(甘み)
- タンパク質 → プロテアーゼ → アミノ酸(うま味)
- 脂質 → リパーゼ → 脂肪酸・グリセリン
発酵初期にはこの分解が進み、味噌の甘みと栄養価が生まれます。
ちなみに、口に入れたごはんがだんだん甘く感じるのも、 唾液中のアミラーゼが働いている証拠です◎
② 微生物による発酵|香りやまろやかさのもと
原料が分解されると、今度は「乳酸菌」や「酵母」が活躍し始めます。
乳酸菌の役割:
- 酸性にして雑菌の繁殖を防ぐ
- 保存性を高める
- クセをやわらげ、旨味を整える
みそで主に働くのは、「テトラジェノコッカス・ファロフィルス」という乳酸菌です。
酵母の役割:
- ブドウ糖からアルコールを生成
- アミノ酸から香り成分(高級アルコール)を生成
- 味に“まるみ”を出す(コハク酸など)
代表的なのが、「チゴサッカロミセス・ルキシー」という酵母。 みその香りや深みは、彼らの働きによって生まれるんです。
※ 表面に出てくる白い“カビのようなもの”は産膜性酵母。 毒性はありませんが、見た目が気になる場合は取り除いてOKです。
③ 熟成|色・深み・味わいを引き出す仕上げ工程
熟成は、微生物ではなく化学反応によるもの。
- アミノ酸と糖 → メイラード反応 → 味噌の色と香り
- 複雑な成分が結びついて“コク”が生まれる
長期熟成の味噌は、色が濃く、深い味わいが特徴ですが、 行き過ぎると「過熟」になってしまうことも。
味噌づくりは、まさに“時間との付き合い方”が重要です。
発酵・熟成に必要な4つの条件
- 水分:酵素と微生物が活動できる環境をつくる
- 塩分:悪玉菌を抑制し、有用菌を守る
- 温度:発酵の進行を左右する最重要ポイント
- 時間:じっくりと変化を待つ
これらのバランスが整うことで、 安全でおいしい味噌が完成します。
微生物にとっての“適温”とは?
微生物・酵素 | 活動適温 | 限界温度 |
---|---|---|
麹菌 | 25〜30℃ | 約50℃ |
アミラーゼ・プロテアーゼ | 50〜60℃ | 75〜80℃で失活 |
酵母菌 | 25〜35℃ | 約70℃ |
乳酸菌 | 20〜35℃ | 約75℃ |
※ 高温調理での加熱は、これらの菌や酵素を失活させる可能性があります。 一方で、安全性を高めたり、野菜のカサを減らす効果もあるので、 調理法は“目的に応じて使い分ける”ことが大切です◎
味噌の保存と熟成の止め方
- 15℃以下 → 発酵がゆるやかに
- 5℃以下 → 熟成が止まり、色変化も防げる
- 冷凍保存もOK(凍らない!)
長期保存したい方には、冷凍保存がいちばんオススメです。
発酵の不思議と未来への可能性
味噌づくりは、私たち人間の手だけではできません。 微生物と化学、そして“時間”という自然の力が合わさって完成する、 まさに“奇跡の食べ物”。
まだまだ発酵の世界は未解明なことも多く、 これからの研究によって新たな力が明らかになっていくでしょう。
私は研究者ではありませんが、 この伝統的な味噌文化の魅力を、 もっと多くの人たちに伝えていきたいと思っています。
日本から世界へ。味噌のチカラを届けていきましょう!
次回予告
次回は、いよいよ味噌の“機能性”について。 健康・美容・スポーツの観点から、 味噌が私たちの体にどんなメリットをもたらしてくれるのかをご紹介します!
どうぞお楽しみに🍲