異常気象!? 積雪1m超え 北海道天塩町の雪の状況と生活への影響 〜現地在住50年以上の農園オーナーの声〜
2025/02/10
2025年2月に入り、日本海側を中心に驚くほどの大雪。北海道の帯広でも、12時間で120cmを超える積雪を記録しました。ずっと、寒くて雪の日が続くというのならなんとなく分かりますが、良い天気が続いて、暖かいなと思ったら、急に大雪と、「日本大丈夫か!?」と思ってしまいます。
私は、現在はさいたま市に住んでますが、春からお世話になっている「おのっぷ農園」のオーナーの畑をお借りして、北海道天塩町で春菊を栽培します。先月は、おのっぷ農園さんで「菊芋茶」の製造の仕事のため、2週間ほど天塩町に滞在しました。そこで、現地に住んでいる方や自分が目にしたこと、そして、現地での生活や雪の影響について、みなさんにも知ってほしいと思い記事を書きました。


おのっぷ農園さんの「キクイモ茶」。有機栽培でキクイモを栽培し、収穫、乾燥、焙煎まで、すべて手作業。1日に焙煎できるのは約500gの貴重なお茶。私の本業は、管理栄養士なので、菊芋茶の効能はいくらでもお話できますが、シンプルに私がこのお茶をおすすめするのは、「本当においしい!」から。菊芋茶というと、血糖値を下げるお茶だけど、味はどうなんだろうと思う方も多いと思いますが、おのっぷ農園の「キクイモ茶」は、味がしっかりしていて、麦茶をさらに濃くし、少し甘味があるイメージです。1パック(4g)で1-2ℓのお茶を水だけで完成するのも魅力です。https://note.com/onoppu_farm
目次
異常気象と天塩町の雪の状況と生活への影響
天塩町は、北海道の北部の日本海側に位置する街で、人口は約2000人。道内2位の長さを誇る天塩川や天塩山地をはじめとする雄大な自然が魅力の街です。花や野鳥、大粒なしじみが有名で酪農が盛んな地域です。天塩町の夕日は、圧巻で筑波大学の研究でも科学的に美しいと立証されるくらい、綺麗で感動します。日本最北端の稚内まで車で1時間ほどという通り、夏は比較的冷涼で冬は極寒です。冬の最低気温は−10℃となることも稀ではないそうです。冬の街は寒いですが、人は温かい。そんな素敵な街です。
2025年1月の天塩町の雪の状況 まぁ雪はすごく積もっているよね。笑

この写真は、倉庫の屋根に登って撮影した写真です。2025年1月16日の様子です。この写真を撮影する2-3日前に大雪が降ったみたいで、年末に屋根を雪下ろしをしたのに、屋根の上には100cmほど、積もってました。吹雪の影響で1月15日の羽田ー稚内空港行きのフライトは欠航となり、1日遅れで天塩町に到着しました。気温も朝方は−10℃で日中も氷点下というような感じでした。道路も除雪はされていますが、一面雪で真っ白です。さすが、北海道の北部だなと思っていましたが、オーナーの哲さんに話を聞いてみると、どうやら今年の冬は、何か天気がおかしいということでした。

柴犬じゃなく、きつねさんです。この時期の天塩町では、鹿、きつね、テンをよく見かけます。
異常気象によって天塩の街で起こっていること
天塩町の12月、1月、2月といえば、平均気温も氷点下で積雪が当たり前とのイメージでしたが、「今年の冬は何か違う!」とのことです。

気象庁ホームページ参照
この通り、1991~2020のデータによると、イメージ通り12月、1月、2月、3月の平均気温は氷点下で、最高気温ですら、氷点下です。降雪の合計は、1月では200cmを超えます。そのため、現地では、除雪や屋根の雪下ろしをすることは、日常のことです。

私も雪下ろしをしました。写真では分かりにくいかもしれませんが、これは高さ5m近くの倉庫の屋根の上の雪下ろしの様子です。地面から屋根の上まで屋根が積もっており、ハシゴなしで屋根まで登れます。屋根の雪を落とそうにも、落とす場所がないという状況でした。また、降ったばかりの雪であれば、重くなく簡単にスコップやスノーダンプで落とせますが、屋根の近くの雪はもうカチカチでなかなかスコップが入らず、雪下ろしが困難です。体力に自信がある私でも、3時間やったら、なかなかの疲労度でとてもじゃないですが、1日は無理だなと感じました。また、3時間でできる範囲は、意外と狭く、屋根全体の1/6も終わらず、まぁまぁへこたれました。笑 オーナーの哲さん(62歳)は「やっても30分-60分でそれ以上は無理」と言ってました。みなさんが想像している以上に雪下ろしは大変です。でもやらないといけない。やらないと、建物が潰れてしまうからです。また、誰かにお願いしたくても、やってくれる人もいない。なので、ご高齢の方でもやらざるを得ない。それが、現実です。他のまちや地方でもそういった地域が多いのではないでしょうか。

ここまでの印象だと「やはり、北海道の北部は雪がたくさん降って大変だな」と「異常気象で雪が大量だ」と感じる方がほとんどだと思いますが、オーナーが感じている異常気象は、なんと逆です。「今年の冬は暖かく、何かおかしい!」とのことです。
実際に、私は1月16日から1月31日まで天塩町いましたが、雪下ろしをしたのは、最初の3日だけ。雪がチラつくことはありましたが、晴れの日が多く、気温も日中では氷点下ではなく、3℃くらいの日が多かったです。20日くらいからは、道路の雪も溶け、アスファルトが見える部分も多くありました。オーナーによると、3月くらいの天気に感じるとのことでした。「いつもより暖かくて、雪も少なく、晴れでいいじゃん!」と感じるかもしれませんが、実はそうでもない現状があります。
暖かいことで起こる生活への影響


このように、天塩町では雪によって牛舎や建物が崩壊している場所が多数ありました。オーナーの牛舎も年末の大雪で崩壊してしまいました。今年の1月は特に崩壊が40-50件くらい牛舎や倉庫が崩壊したのではないかとのことです。原因は、降雪によるものですが、そこに気温が関係しています。今までならば、気温がしっかり下がり、寒かったため、乾いたいわゆる「サラサラ」の雪だったのが、気温が上がったことにより、湿った「ジメジメした雪」が多く降ったのです。触ってみると分かりますが、サラサラの雪とジメジメした雪では、重さが全く異なります。基本的に、気温が下がれば下がるほど、雪はサラサラになります。それが、今年は暖かいことにより、ジメジメした雪がドカンと降ったことで、このように建物の崩壊が多いのではないかとのことでした。地球温暖化の影響によるものなのでしょうか?暖かい日が続いているなと思ったら、急に寒気が来て大雪。大丈夫なのか日本は。
崩壊した牛舎は片付けるのも直すのも大変
このように崩壊した牛舎が街の至る所でありますが、現状、片付けるのもひと苦労です。崩壊に備え、牛舎や建物には、保険がかけられているそうですが、牛舎の中に1匹でも牛がいるかどうかで補償の金額は大きく変わるそうです。現状、天塩町では、酪農を縮小または、廃業した方も多く、保険に入ってない方も多くいらっしゃったり、補助金があるとはいえ、修理にも100万以上のお金がかかる場合や資材の高騰、または流通不足、そして、そもそも修理してくれる業者の方や人の不足により、全く目処が立たないという人が多数います。たとえ、修理できるとなっても、片付けるとなるとか相当気合いが必要でなかなか重い腰を上げるのは、大変なのではないかと想像できます。これが地方の現状です。さいたま市で生活していたら、そのような苦労や問題があることにも気づいてなかったでしょう。都会では、当たり前のことでも、地方では違ったり、その逆のこともたくさんあるでしょう。都会では、溢れている人材や才能でライバルが多く、行き詰まっていても、地方では輝けるチャンスもたくさんあるのではないか。(私はそう思い、春から2拠点生活を開始します。)
北海道の中でも、今年は雪が全然降らない地域もあるみたいです。雪が降ることで、雪の断熱効果や空気が熱を伝えにくい性質により、地面や家、また雪に埋もれた植物や土壌が外気の厳しい寒さから守られます。「かまくら」が暖かく感じるのはそのためです。雪が降らないことにより、地面が凍ってしまって、土壌環境が変化し、農業にも影響が出るのではないかとオーナーは言ってました。雪が降る地域は、雪が降ることによるメリットもあり、昔からそのような環境に適応した生活をしてきたのに、それが今、崩壊しつつあるのではないでしょうか。このような変化を受け入れ、対応していくことも考えなければならないのかもしれませんね。個人的には、北海道の農業はこれからも大きな役割を担い、気温の上昇により、本州では栽培が難しくなった作物などの生産をどんどん担っていくのではないかと考えています。というわけで、農業の95%近くが酪農の町である北海道天塩町で畑を始めようと思います。大きなチャンスでもあり、いずれはこの街の雇用を創出するような人になりたいです。本業ももちろん本気!(本業はスポーツ栄養士で、プロのアスリートのサポートをしています。ちょっとだけすごい奴です。笑)