活躍したいアスリートのあなたへ!プロ管理栄養士が伝える、パフォーマンスを高める栄養戦略
2025/04/16
目次
はじめに:アスリートにとっての栄養とは?
プロラグビーやオリンピックを目指す選手たちをサポートしてきたパフォーマンスNutritionistとして、現場で培った経験を元に「アスリートに本当に必要な栄養」についてお伝えします。
アスリートは単に「生きるため」だけではなく、「結果を出すため」に食べる必要があります。
- トレーニング効果を最大化する
- 試合で最高のパフォーマンスを発揮する
- 怪我や故障を防ぐ
これらを支えるのが、日々の"食事"。あなたのパフォーマンスは、あなたが食べたものでできています。

(実際に、Season開始時のMTG時に使っていた資料)
「最高のパフォーマンスを発揮するために、何が必要でしょうか?」
やるべきことはたくさんありますが、私がまず大切だと考えているのは、
**「日々のトレーニング効果を最大化すること」**です。
そのためには、毎日の
**「準備」と「リカバリー」**が欠かせません。
一見地味な取り組みかもしれませんが、この積み重ねこそが、結果に直結します。
そして、この「準備」と「リカバリー」の要となるのが **“栄養”**です。
食べるだけでは足りない。大切なのは「何を・いつ・どれだけ」食べるか。
栄養には多くの種類があり、目的に応じて、摂取する「内容・量・タイミング」を考慮して選ぶ必要があります。
さらに、ひとりひとり体も違えば、体質や腸での吸収率も異なります。
加えて、競技の特性やスケジュール、そしてピリオダイゼーション(試合前/試合中/オフ/増量期など)によっても、必要な栄養バランスは大きく変わります。
「私は何を食べたらいいんだろう?」
そんな悩みを持つアスリートは少なくありません。
「これを食べれば勝てる!」
そんな魔法のような食べ物があればいいのですが、残念ながら存在しません。
また、実際に食事がどれだけ試合の一瞬のプレーに影響したのか――
それを正確に測ることも難しいでしょう。
でも、確実に言えることが一つあります。
「あなたは、あなたが食べたものでできている」
そう思えば、「何を食べるか」「どれだけ食べるか」で
未来は変えられる気がしませんか?
だからこそ――
できる限りの準備をして、納得のいく状態で試合に臨み、自分の力を出し切る。
その方が、きっと悔いは少ないはずです。
選ばれしトップアスリートには、「覚悟」と「責任」が必要
トップを目指すあなたには、
**「最高の準備をして、最高の結果を追求する」**という覚悟が必要です。
一般人とアスリートでは、求められるものが違います。
だからこそ――
あなたは特別なのです。
トレーニングだけでなく、栄養と休養にも目を向けて。
次のステージに向けて、一緒に頑張っていきましょう!
栄養の基本とパフォーマンスUpのつながり
「栄養って、本当に必要なの?」
アスリートにとって、食事や栄養の意義は、単に“お腹を満たす”ことではありません。
ここでは、栄養がどうパフォーマンスに関係しているのか、3つの観点から整理します。
アスリートにおける栄養の3つの役割
- トレーニング効果を最大化するため
- 試合で最高のパフォーマンスを出すため
- 怪我や故障を予防するため
1. トレーニング効果を最大化するため
アスリートにとって、体が資本です。
その体をつくるのがトレーニングであり、トレーニングの効果を支えるのが「栄養」と「休養」です。
以前、ダルビッシュ有選手もこのように語っていました。
「1年間、投げ続けるためにはしっかりと体を作ることが大事だし、それができれば自然と技術も伸びてくる。体づくりを怠るようだと、いい選手にはなれないと思っているんで」
(Number Web インタビューより)
https://number.bunshun.jp/articles/-/148276?page=3
トレーニングでは、筋肥大 → 筋力アップ → パワー&スピードの向上、というように段階的に成長していきますが、ベースにあるのは筋肉量です。
筋肉を増やし、体を強くするには、トレーニング効果を最大化する「準備」と「リカバリー」が重要。
そして、そこに必要なのが毎日の食事=栄養です。





2. 試合でパフォーマンスを発揮するため
試合で力を発揮するためには、「当日だけ頑張る」のでは遅すぎます。
ポイントは、試合前の栄養戦略にあります。
体を動かすエネルギー源となる「筋グリコーゲン(糖質)」を、
試合前までにしっかり体にためておくことがカギになります。
そのためには、
- いつ
- どこで
- 何を
- どれくらい
食べるかを逆算して考える必要があります。
特に、消化吸収にかかる時間も考慮して、前日から食事を整えることが大切です。

3. 怪我や故障を予防するため
栄養は体づくりだけでなく、怪我の予防にも役立ちます。
特に注目してほしいのが、「水分」と「糖質」。
水分補給=飲み物のイメージが強いかもしれませんが、食事も立派な水分補給なんです。
- 1日3食の食事から 約1〜1.5ℓ の水分補給が可能
- 野菜や果物の多くは、90%以上が水分
- 糖質1gにつき、水分3gを体内に保持できる
そして、筋肉の75%は水分でできています。

また、筋肉の75%は何で構成されているか、あなたは知っていますか?
筋肉の75%は水分で構成されています。

▶ 食事量が減ると、体に何が起きる?
食事量が減る
→ 糖質・水分の摂取量が減る
→ 筋肉内の水分も減る
→ 筋肉の柔軟性が落ち、怪我のリスクが上がる!
イメージしてみてください。
「生の牛肉の塊」と「ビーフジャーキー」。
どちらが手で裂きやすいですか?
そう、水分の少ないビーフジャーキーの方が裂けやすいですよね。
筋肉も同じです。
水分のない硬い筋肉は、衝撃に弱く、肉離れなどの怪我につながりやすくなります。

アスリートにとって「食事」は、単なる栄養補給ではなく、**競技力向上のための“手段”であり“武器”**です。
ぜひ一度立ち止まって、あらためて考えてみてください。
🔍 なぜ食べなければならないのか?
- 体づくりのため?
- パフォーマンスを発揮するため?
- ケガを防ぐため?
どれも「はい」と答える方は多いはずです。
でも、**日々の食事で“それを意識できているか”**は、また別の話。
🌱 小さな一歩が未来を変える
もし今、食事に対して「必要性」を少しでも感じたなら、
まずは “今の食事”を見直すことから始めてみましょう。
「何か改善できそうなところはあるかな?」
そんな視点をもつだけでも、意識は変わります。
そして、できそうなことを1つだけでも、まず“実行”してみてください。
🔁 食事の工夫=未来の自分への投資
体づくりも、競技力の向上も、一気に変わることはありません。
でも、小さな積み重ねが必ず“違い”を生み出します。
ここまでのまとめ
栄養が果たす役割は、以下の通りです。
- 体づくりを助け、トレーニング効果を最大化
- エネルギー源をしっかり蓄えて、試合で最高のパフォーマンスを発揮
- 筋肉の水分バランスを保ち、怪我を予防する
「食べること」は、アスリートにとって武器のひとつ。
日々の積み重ねで、確実に差がつきます。
アスリートに必要な栄養素とは?
アスリートにとって、「どんな栄養素が必要か?」という問いに対して、答えはシンプルです。
すべての栄養素が必要です。
中でも特に重要なのが、以下の「5大栄養素」と呼ばれるものです。
アスリートを支える5大栄養素
- 炭水化物(Carbohydrate)
→ 主なエネルギー源。動くための“ガソリン” - たんぱく質(Protein)
→ 筋肉や血液、体の材料となる“構築材” - 脂質(Fat)
→ 長時間の活動に必要なエネルギー源。ホルモンの材料にも - ビタミン(Vitamins)
→ 体内の代謝を助ける“潤滑油” - ミネラル(Minerals)
→ 骨や歯の材料、神経・筋肉の働きに関与する“調整役”

もう少し、簡単な言葉でまとめたものが次の図です。

ビタミンとミネラルの“細かな違い”を知ろう
アスリートにとって「ビタミン」と「ミネラル」は、
**体の調子を整える“微量栄養素”**として欠かせません。
どちらも、摂取量はほんの少しでOKですが、
不足すればパフォーマンス低下に直結するほど重要です。
✅ ビタミンは13種類に分類される!
種類 | 含まれる栄養素 | 特徴 |
---|---|---|
脂溶性ビタミン | A・D・E・K | 油に溶ける。摂りすぎに注意(体内に蓄積) |
水溶性ビタミン | B1・B2・ナイアシン・B6・葉酸・B12・ビオチン・パントテン酸・C | 水に溶ける。こまめに補給が必要 |
脂溶性ビタミンは「吸収されやすいけど、過剰摂取に注意」
水溶性ビタミンは「毎日こまめに摂らないと不足しやすい」
それぞれの性質を理解して摂取していくことが大切です。
✅ 主なミネラルもおさらい
- ナトリウム(Na):水分バランス・神経伝達に関与
- カリウム(K):むくみ対策・筋肉の動きに関与
- カルシウム(Ca):骨の材料・神経伝達に必須
- マグネシウム(Mg):筋肉の収縮やリラックスに必要
- 鉄(Fe):酸素を運ぶ赤血球の材料(特に持久系スポーツに重要)
- 亜鉛(Zn):免疫や回復、ホルモン調整に関与
ビタミンやミネラルは、ただ、摂取すれば良いというわけではなく、欠乏しても、過剰に摂取しても体内で悪影響を及ぼす可能性がある。そこが食事や栄養の難しい点でもあり、楽しみでもあるのかと思います。
💡 微量でも“影響大”な栄養素たち
- ビタミン・ミネラルは mg(ミリグラム)やμg(マイクログラム)単位でOK
- でも「ちょっと足りない」が 慢性的に続くと不調やケガにつながる
- **過剰摂取もNG!**サプリなどで“摂りすぎ”に注意
🌱 食事の工夫が鍵!
ビタミン・ミネラルは種類も多く、すべてを完璧に摂るのは大変。
だからこそ、以下を意識してみましょう。
- 主菜・副菜・果物・汁物などを組み合わせる
- できるだけ多くの食材を使う
- 旬の野菜や果物を活用する
- 同じものばかり食べない
これらを意識するだけで、摂取できるビタミン・ミネラルの種類も増え、
体づくりの土台が整ってきます。
🎯 まとめ:ビタミン・ミネラルは“地味だけど超重要”
- 少量でも効果大!「体の調子を整える要」
- 欠乏しても、過剰に摂ってもNG。バランスが大事
- 日々の食事の小さな工夫が、パフォーマンスにつながる
アスリートにとって、トレーニング効果の最大化と体調管理において、
ビタミン&ミネラルは、**“陰の立役者”**といえる存在です。
ぜひ、日々の食事の中で意識してみてください。
ビタミンやミネラルの細かい働きは以下の通りです。
DNS NUTTITION GUIDE (参照)


「バランスの良い食事」がなぜ必要?
これらの栄養素は、それぞれ役割が異なるため、どれか一つだけでは十分なパフォーマンスは発揮できません。
日々の食事で 5大栄養素を過不足なく摂ること。
それが、体づくり・パフォーマンスアップ・ケガ予防につながります。
だからこそよく耳にするのが、
👉「バランスの良い食事を心がけましょう」という言葉です。
栄養素の「必要量」や「優先度」は一定ではない!
- 試合前か? 試合後か?
- トレーニングの強度は?
- 増量・減量・ピーキング・リハビリのフェーズか?
このように、**競技特性や時期(ピリオダイゼーション)**によって、
必要な栄養素や摂取量、バランスは変化します。
必要な栄養素をバランスよく摂取するための食事の基本
アスリートの「食事の基本形」とは?
アスリートが毎日の食事で意識してほしいのがこちらの基本形です:
「主食+主菜+副菜+(汁物)+果物+乳製品」
これは、味の素さんの「勝ち飯®️」でも推奨されているスタイルで、5大栄養素を過不足なく摂取できる黄金バランスです。

食事の目的に応じて「量」を調整する
基本形の「内容」は変えずに、食事の目的に応じて、それぞれの“量”を調整するのがポイントです。
食事の目的 | 主食 | 主菜 | 副菜 | 汁物 | 果物 | 乳製品 |
---|---|---|---|---|---|---|
日常(ベース) | 1 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 |
試合前 | 2 | 0.5 | 2 | 1 | 2 | 0〜1 |
増量中 | 2 | 1.5 | 2 | 1 | 2 | 1 |
減量中 | 1 | 1 | 2〜3 | 1 | 1 | 0〜1 |
※数値は“割合”のイメージです。
食事の基本形を「習慣」にしよう
どんな目的の食事でも、基本となるのはこの「食事の型」。
この形を毎食にできるだけ近づけることが、トレーニングの成果を最大化する第一歩です。
「準備」も「リカバリー」も、すべてはこの積み重ねから。
ポイント
- 主食=エネルギー源(炭水化物)
- 主菜=筋肉や体の材料(たんぱく質)
- 副菜=ビタミン・ミネラル・食物繊維の宝庫
- 汁物=水分とミネラルの補給に最適
- 果物&乳製品=栄養補助とリカバリーに貢献
たんぱく質をしっかり摂取できているか?
パフォーマンス向上には「筋肉量の増加」がカギ
体づくりに欠かせない栄養素といえば、たんぱく質です。
たんぱく質は筋肉の材料。トレーニングをしても、たんぱく質が足りなければ、筋肉は増えません。(もちろん、トレーニングをせずにタンパク質だけ摂取しても筋肉は増えません。)
日に必要なたんぱく質量は?
アスリートの場合、必要量の目安は以下のとおり:
体重(kg) × 1.2〜2.0g/日
(※筋肉増加を狙う場合は、1.62g前後が目安)1回あたり、「体重×0.31g」を目安にするとよいとのことでした。
*(安田 純先生による見解によると)
例:体重60kgの選手なら、72〜120g/日のたんぱく質が必要です。
「質の良いたんぱく質」を複数組み合わせよう
たんぱく質には**アミノ酸スコア(吸収効率)**があります。
中でも、**スコア100の「質の良いたんぱく源」**を意識して選びましょう。
質の良いたんぱく源5選:
- 肉
- 魚
- 卵
- 大豆製品(納豆、豆腐など)
- 乳製品(ヨーグルト、牛乳、チーズなど)
✅ 1食でこの中から2種類以上を組み合わせるのが理想です。
副菜にも“たんぱく質食材”を活用しよう
主菜だけでなく、副菜にもたんぱく質を含めることで、摂取量はグッと増えます。
例:
- ちくわ+野菜炒め
- ツナサラダ
- 高野豆腐の煮物
- 枝豆のごま和え
- しらすおろし
コンビニやスーパーでも手軽に買える食材ばかりなので、毎食1品追加するだけで大きな差になります。
摂取量だけじゃなく「摂取タイミング」も重要!
たんぱく質は、一度に吸収できる量が限られています。
そのため、1日3食+補食で“分けて摂る”のがベストです。
例:体重60kgで1日90g必要な場合
→ 朝30g・昼30g・夕30g もしくは 朝25g・昼30g・夕25g+補食10g など
まとめ:体づくりのための2つのポイント
- 「1食にたんぱく源を2種類以上」組み合わせること
- 「1日3食+補食」でバランスよく摂取すること
📝 特別な料理は不要!
たとえば、朝食に納豆や卵、ヨーグルトを1つ足すだけでも、大きな一歩です。
小さな積み重ねが、強い体をつくります。

📌 本日のまとめ|パフォーマンスアップに欠かせない“栄養”の力
アスリートにとって栄養は、ただ「食べること」ではなく、目的を持って体を整えるための戦略です。
今日お伝えしたポイントを振り返っておきましょう!
✅ パフォーマンスアップのカギは「準備」と「リカバリー」
- パフォーマンスを最大限引き出すためには、**毎日の“準備”と“リカバリー”**が欠かせません。
- それを支えるのが、栄養・トレーニング・休養の3本柱です。
✅ 栄養の役割は3つ
- 体づくりとトレーニング効果の最大化
- 試合でパフォーマンスを発揮するためのエネルギー確保
- ケガや故障を防ぐ“強い体”づくり
✅ 5大栄養素を“過不足なく”摂ることがベース
- 炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルは、どれも欠かせません。
- **「何を、どれだけ、いつ食べるか」**を意識し、目的に応じて栄養を選びましょう。
✅ 食事の基本は「6つの要素」で整える
主食+主菜+副菜+(汁物)+果物+乳製品
この食事の“型”を守りつつ、目的に応じて量とタイミングを調整することで、日々のパフォーマンスにつながります。
✅ たんぱく質は「量」だけでなく「タイミング」と「質」も大事!
- 体重(kg)×1.2〜2.0g が1日の必要量の目安
- 1食につき2種類以上のたんぱく源を組み合わせる
- 朝・昼・夕・補食で分けて摂ることで、吸収効率もUP!
🎯 最後にひとこと
「あなたは、あなたが食べたものでできている」
アスリートとして、最高の準備=最高の自分を作ること。
特別なことをしなくても、日々の食事を整えることが、最も確実で最も効果的な一歩です。
まずは、小さな改善から。今日から、できることから、始めてみましょう!