活躍したいアスリートのあなたへ!プロ管理栄養士が考えるアスリートに必要な栄養とは?
2024/11/11
目次
「アスリートに必要な栄養とは?」
プロのラグビー選手やオリンピックを目指すレスリング選手をサポートしているパフォーマンスNutritionistの私が今までの経験を踏まえ、アスリートに必要な栄養の考え方について紹介したいと思います。
「ひとはなぜ食べるのか?」
食事には様々な役割があり、いろいろな答えがあるかとは思いますが、
根本的に「ひとは生きるために食べます。」
栄養の定義として、「楽しくわかる栄養学」(中村丁次さん)の書籍などをはじめ、
「栄養(Nutrition)とは、生体が食物などを摂取して、その成分を消化、吸収、代謝することにより、生命を維持し、成長、発育して生活を営む一連の状態をいう」としています。
そして、摂取すべき成分を栄養素としています。
5大栄養素を中心に毎日、食事から栄養を摂取しなければ、私たちは生きることはできません。
それでは、
「アスリートのあなたは、なぜ、食べるのでしょう?」
「生きるため」だけでしょうか?
いろいろな考えはあると思いますが、
私は、アスリートは「結果を出すために食べる」必要があると考えています。
最高のパフォーマンスを発揮し、結果を残す。
1年1年のこうした積み重ねと、「現在よりもすばらしいPlayerとなること」を追求し続けることが充実した競技人生となり、輝かしいキャリアにつながり、また、引退後も多方面で活躍するベースになると考えています。
そうした輝かしいキャリアを過ごすための助けの一部となるのが、「栄養」であり、
パフォーマンスUpのために、アスリートであるあなたにも日々の食事に向き合ってほしいと思っています。
(実際に、Season開始時のMTG時に使っていた資料)
では、
「最高のパフォーマンスを発揮するためには、何が必要でしょうか?」
いろいろやるべきことはたくさんありますが、
「日々のトレーニング効果を最大化すること」が大切です。
そして、そのためには、毎日の「準備」と「リカバリー」が必要不可欠です。
地味かもしれませんが、この毎日の積み重ねが、非常に重要です。
そして、この「準備」と「リカバリー」において、栄養が重要な役割を担います。
ただ、食べるだけでなく、「何をいつ、どれくらい食べるのか?」
様々な栄養素がある中から、私たちは目的に合わせて、量やタイミングなども考慮した上で、
食事を選択していく必要があります。
また、ひとりひとり、体も違えば、体質も違い、腸で吸収率も違います。
さらに、競技も違えば、運動特性も違います。そして、スケジュールやピリオダイゼーション
(試合前/試合中/試合後/練習時/筋量Up/筋力Up/スピードUp/ピーキング/オフ/増量/減量/リハビリetc.)によって、必要な栄養素やバランスは違います。
だからこそ、「私は何を食べたらいいのか?」と悩むアスリートの方も多いのではないでしょか?
「これを食べれば、必ず試合に勝てる!!」
そんな魔法の食べ物があればいいなと思いますが、実際には、そのような食べ物はありません。また、「食事がどれくらい実際の試合時の一瞬のプレーに影響したのか。」それも正確にはわかりません。もしかしたら、効果はほんのわずかだったり、あまり効果はないのかもしれません。
しかし、少なくとも言えることは、「あなたはあなたが食べたものでできている。」
そう思えば、食べるものや食べる量によって、何か変わるのではないかと思いませんか?
それならば、「できる限り最高の準備を行い、納得のいく準備をして、試合に望み、
自分の力は出し切った」と思う方が悔いは少ないのではないでしょうか?
選ばれし、トップアスリートのあなたには、「最高の準備をして、最高の結果を追求する。」
そのような「覚悟」と「責任」が必要だと考えます。
一般人とアスリートでは、いろんな面で違うのです。
それだけ、あなたは特別なのです。
トレーニングだけではなく、栄養や休養にも少し目を向けて、
更なる飛躍に向けて共に頑張っていきましょう!
栄養の基本とパフォーマンスUpとのつながり
栄養の定義は、上記にも述べましたが、アスリートにとって、なぜ栄養は必要なのでしょうか?
アスリートにおける栄養や食事の意義
- トレーニングにおける体づくりや効果を最大化するため
- 試合でパフォーマンスを発揮するため
- 怪我や故障を予防するため
1.トレーニングにおける体づくりや効果を最大化するため
アスリートにとって、体づくりが重要なことは言うまでもありません。
なぜなら、あなたのパフォーマンスを表現するのは、あなたの体であり、体が資本だからです。
以前、メジャーリーガーのダルビッシュ有さんが体づくりにおける持論を述べておられました。
「1年間、投げ続けるためにはしっかりと体を作ることが大事だし、それができれば自然と技術も伸びてくる。体づくりを怠るようだといい選手にはなれないと思っているんで」
https://number.bunshun.jp/articles/-/148276?page=3
そして、その体づくりには、計画されたトレーニングはもちろん、栄養や休養も必要です。
パフォーマンスUpのためには、体づくりが必要不可欠ですが、
まず考えなければならないことは、筋肉量をどのように増やしていくかです。
筋肉量とパフォーマンスUpは密接につながっています。
また、トレーニングにおいても最終的には、パワーやスピードを上げていくトレーニングへとつなげていくことが多いですが、そのベースになるのはやはり筋肉量です。
大まかにいうと筋肥大のトレーニングからスタートし、筋力強化、そして、パワー&スピードというPhaseに移行していくことが一般的かと思います。
筋肉量を上げ、フィジカル面を強化したことが前提で、細いスキルやムーブメント、体の使い方などパフォーマンスUpに向けて、さらなる取り組みが必要となってきます。
パフォーマンスUpのためには、体づくりや筋肉量Upをはじめ、フィジカルの強化が必要であり、日々の「トレーニング効果を最大化する」ことにフォーカスすることが重要である。
そのためには毎日の「準備」と「リカバリー」が必要不可欠で、その一部を担っているのが「栄養」であると私は考えています。
2.試合でパフォーマンスを発揮するため
試合でパフォーマンスを発揮するためには、事前の準備が非常に大切です。
栄養の観点から言うと、競技によっても違いますが、基本的にどれだけ試合前までに体を動かすためのエネルギー源(筋グリコーゲン)を体の中に貯蓄できるかがポイントです。
体を動かすためのエネルギー源が不足すれば、思うように体も動かせませんし、
パフォーマンス低下にもつながりやすい様々なネガティブな変化が体の中で発生します。
試合前は、当日の試合時間から逆算し、前日から、「いつ何をどれだけ、どの場所で摂取するか」を考える必要があります。エネルギーに変わるまで、どれだけ時間がかかるか(消化・吸収)も考慮した上で栄養スケジュールを設定します。
3.怪我や故障を予防するため
食事をすることで怪我や故障の予防にもつながります。
「水分補給」というと、飲み物を補給するイメージが強いかと思いますが、食事も立派な水分補給です。1日3食の食事で約1〜1.5ℓの水分補給ができると言われています。食材にも多くの水分が含まれており、野菜や果物の中身は、90%以上水分で構成されているものが多いです。
栄養素で見ると、糖質は体内で水分で結びつく作用があるとされています。
(糖質1gと水分3gが結びつく)
私たちの体は、年齢によって差がありますが、約60%が水分で構成されています。
また、筋肉の75%は何で構成されているか、あなたは知っていますか?
筋肉の75%は水分で構成されています。
ここまでをまとめると、
1.食事も立派な水分補給である
2.糖質は体内で水分と結びつく性質がある
3.筋肉の75%は水分で構成されている
では、「食事量が減少するとどのようなリスクが体に生じるでしょう?」
食事量が減少することで、結果的に糖質や水分の摂取量も減少します。
すると、体内の水分量が減少し、筋肉の中に含まれる水分量の減少にもつながります。
ここで、「生の牛肉の塊」と「ビーフジャーキー」をイメージしてください。
どちらが、簡単に手で裂くことができますか?
ビーフジャーキーの方が簡単に手で裂けますよね。
水分を失った筋肉は柔軟性も低下し、大きな衝撃がかかることによって、切れやすくなるため、肉離れをはじめ、筋肉系の怪我につながりやすいと考えられます。
これはほんの一例に過ぎませんが、食事をすることで体水分量の維持につながり、
怪我や故障の予防となることがお分かりいただけたのではないでしょうか?
アスリートにおける栄養や食事の意義を再度、確認していただき、「なぜ食べなければならないか?」をこの機会にぜひ、考えてみてください。そして、必要性を感じたならば、「現在の食事を振り返り、何か改善できることはないか」と探ってみてくだだい。そして、「できそうなことをまずはなんでもいいので、1つやってみてください。」ちょっとした栄養摂取の意識の差でも、体づくりは少しづつ変わってくると思います。今後、目的やピリオダイゼーション別に、摂取すべき栄養やタイミングなどをまとめていく予定なので、ぜひ、参考にしていただき、できることを増やしていってください。
アスリートに必要な栄養素とは?
アスリートに必要な栄養素ですが、基本的に全ての栄養素が必要です。
その中でも、「炭水化物/タンパク質/脂質/ビタミン/ミネラル」の5つの栄養素を5大栄養素と呼び、それぞれ体づくりやパフォーマンスを発揮する際に重要な働きを担います。
この5大栄養素を過不足なく、日々、必要量を満たしていくことが、非常に重要です。
そして、それらを達成するために「バランスの良い食事をしましょう」と表現することが多いです。
目的やタイミングによって、必要な栄養素や栄養量、優先度は変わってきますが、
基本的にこの5つの栄養素を過不足なく、摂取することを心がけていきましょう。
それぞれの栄養素の働きはざっくりまとめると以下のスライドの通りとなります。
もう少し、簡単な言葉でまとめたものが次の図です。
ビタミンをさらに細かくみていくと、以下の13種類に分類されます。
・脂溶性ビタミン(A・D・E ・K)
・水溶性ビタミン(B1・B2・ナイアシン・B6・葉酸・B12・ビオチン・パントテン酸・C)
また、ミネラルも、ナトリウム(Na)・カルシウム(Ca)・リン(P)・カリウム(K)・マグネシウム(Mg)・鉄(Fe)・亜鉛(Zn)など、私たちが必要なものが数多く存在します。
ビタミン・ミネラルには、それぞれいろんな働きがあり、適切な量を摂取することで、効果を発揮します。ビタミンやミネラルは微量栄養素とも呼ばれ、必要量はmgやμgのものも多数存在します。少量でも体に重要な変化をもたらすものというイメージを持ってもらえると良いかと思います。だからこそ、少しの食事の工夫や変化の積み重ねがパフォーマンスにポジティブな影響をもたらすのではないでしょうか?
ビタミンやミネラルは、ただ、摂取すれば良いというわけではなく、欠乏しても、過剰に摂取しても体内で悪影響を及ぼす可能性がある。そこが食事や栄養の難しい点でもあり、楽しみでもあるのかと思います。
ここまでまとめると、基本的にアスリートは、5大栄養素と呼ばれるものを過不足なく摂取し、
体づくりやトレーニング効果を最大化するために、「準備」と「リカバリー」を継続して行っていくことが大切です。細かい点まで追求していくと、ビタミンやミネラルは、さらに多くの成分に分類され、それぞれ働きがあり、過不足なく、適切なタイミングで摂取することで、さらなるパフォーマンスUpにつながる可能性を秘めています。
ビタミンやミネラルの細かい働きは以下の通りです。
DNS NUTTITION GUIDE (参照)
必要な栄養素をバランスよく摂取するための食事の基本的な考え方
必要な栄養素をバランスよく摂取するためには、食事の基本形を意識することが大切です。
アスリートの食事の基本形
「主食+主菜+副菜+(汁物)+果物+乳製品」
味の素 栄養プログラム「勝ち飯®️」
体づくりや試合前、増量、減量など食事の目的によって、食事内容や食べるタイミングなどを変える必要はありますが、基本的にどのような食事の目的においても、この基本形がベースとなります。変更するのは、それぞれの割合(量)であって、この基本形のベースは共通です。
例えば、日常生活での食事での食事の基本形の割合を
「主食(1)+主菜(1)+副菜(2)+汁物(1)+果物(1)+乳製品(1)」とすると
試合前では
「主食(2)+主菜(0.5)+副菜(2)+汁物(1)+果物(2)+乳製品(0-1)」というように
割合を変えていきます。
それぞれ、増量や減量においても、中身の割合を変えていきますが、この基本的な食事のベースは変わらないので、日常生活において、「毎食この食事の基本形にどれだけ近づけることができるか」がポイントです。この食事の基本形をあたり前のように継続し、食習慣としてどれだけ自分のものにできるか。この食習慣をできるだけ、早く身につけることが、パフォーマンスUpに必要な毎日の「準備」と「リカバリー」を効率よく行うことにつながるのではないでしょうか。
たんぱく質をしっかり摂取できているか?
パフォーマンスUpには、筋肉量が関わっていると上記でも述べましたが、筋肉量を増やすためには、計画されたトレーニングとそのトレーニングをサポートする栄養からの「準備」と「リカバリー」、そして、睡眠が必要不可欠です。
栄養の観点から言うと、筋肉量を増やすためには、必要なエネルギー量をしっかり確保するという点と体づくりのベースとなる栄養素である「たんぱく質」を必要量摂取できているかがポイントです。トレーニングの強度やトレーニング量によって、アスリートの必要なたんぱく質量は変わってきますが、「体重(kg)×1.2-2.0g」で設定することが多いです。
必要なたんぱく質量を摂取するために、
「1食でたんぱく源が最低2種類上、できれば3種類摂取できているか?」ということを
私はチェックします。
たんぱく質は、消化されるとアミノ酸という形で小腸から吸収されます。
アミノ酸のうち体内で必要量を合成できない9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼び、
食事を中心に、サプリメントなど体外から摂取する必要があります。
食材に含まれるたんぱくを構成する必須アミノ酸の含有バランスを評価したスコアを「アミノ酸スコア」と呼び、そのスコアが100に近いほど、体内で効率よくたんぱく質が活用されます。
そのため、アミノ酸スコアが100に近い食材を「質の良いたんぱく源」として、そのようなたんぱく源を1食の中でしっかり摂取することができているかが、体づくりに重要な食事のポイントです。
そして、アミノ酸スコアが100、もしくは100に近い質の良いたんぱく源が
「肉・魚・卵・大豆製品・乳製品」の5つです。
なので、ここまでまとめると体づくりのための食事のポイントは
「1食の中で質の良いたんぱく源が最低でも2種類以上摂取できているか?」
質の良いたんぱく源である「肉・魚・卵・大豆製品・乳製品」のうち、
主菜でしっかり質の良いたんぱく源を使い、
さらに副菜でも、質の良いたんぱく源を活用できていれば、必要なたんぱく質量を摂取する手助けとなるでしょう。
副菜は野菜やきのこ、海藻を中心に作ることが多いですが、
副菜の中の1つは「野菜類とたんぱく源」を組み合わせた「アスリートの副菜」を食べることがおすすめです。
タンパク質の必要量を満たせば、肉や魚を主菜でたくさん摂取すれば良いのではないかと思われる方も多いと思うのですが、そうすると、脂質の摂取量もオーバーしがちです。たんぱく質の含有量が多いものは、同時に脂質も多い食材が多数あります。また、食材、ひとつひとつに含まれる栄養素や成分はすべて、異なり、含有量も違います。例えば、同じ肉でも、「牛肉・豚肉・鶏肉」では、それぞれ含まれる栄養素の種類や含有量は違います。だからこそ、1食でできるだけの多くの食材を活用し、いろんな栄養素を摂取するという意味でも、複数のたんぱく源を組み合わせることをお伝えしています。
基本的に献立を考える上で、私は主菜で「肉or魚」をメインで使い、副菜で「卵・大豆製品・乳製品」を組み合わせることが多いです。「肉&魚」は、「卵・大豆製品」に比べて、100gあたりのたんぱく質の含有量が多いからです。その反面、脂質も多くなりがちです。なので、「卵&大豆製品」も副菜でうまく使いながら、必要なたんぱく質を満たすことで、全体的な食事のバランスは良くなるでしょう。もちろん、オムレツや麻婆豆腐など、メインで卵や大豆製品を使うこともあります。その場合は、副菜を工夫し、しっかりとたんぱく質が摂取できる献立を考えます。「ちくわやカニカマ、ツナ、蒸し鶏、はんぺん、桜エビ、しらす、鮭フレーク、油揚げ、枝豆、納豆、高野豆腐」など、スーパーやコンビニを見渡せば、たんぱく質を増やすために有効な食材はたくさんあります。うまく組み合わせていきましょう。
体づくりには、「たんぱく質を必要量しっかりと摂取すること」がポイントですが、もう1つ大切なことがありあります。それは、「たんぱく質は、1日3食&補食を活用し、バランスをよく摂取する」ということです。なぜかというと、「たんぱく質は1回で吸収する量に限度がある」とされているためです。そのため、たんぱく質の必要量が仮に100gだとすると、極端な話、朝(欠食)/昼(たんぱく質10g)/夕(たんぱく質90g)では、必要量は満たすことができても、全部は吸収しないため、体づくりには有効ではありません。
朝(30g)/昼(30g)/夕(30g)/補食(10g)といったようにバランスよく、たんぱく質を摂取することが、効率よく体づくりをするためのポイントです。
「1食で質の良いたんぱく源を最低2種類以上組み合わせること」
そして、「朝・昼・夕・補食で必要なたんぱく質量をバランスよく摂取すること」
この2点をアスリートのみなさんには意識してほしいです。
特別な料理はいりません。
現在の食事に例えば、納豆や卵、ヨーグルトを1つ付け加えるだけでも、大きな進歩です。
「1つでも良いから、質の良いたんぱく源を増やしていこう。」そのような意識を持っていただき日々の「準備」と「リカバリー」に活かし、パフォーマンスUpの手助けとしてください。
本日のまとめ
- パフォーマンスUpのためには「トレニング効果を最大化する」ことにフォーカスし、毎日の「準備」と「リカバリー」が必要不可欠。
- アスリートの食事の意義は「体づくりを効率よくするため」・「パフォーマンスを発揮するため」・「怪我や故障の予防」の3つ
- アスリートが必要な栄養素は「5大栄養素」すべてであり、過不足なく摂取することが、質の良い食事へとつながる
- 5大栄養素を過不足なく摂取するためには、「食事の基本形」を意識する。
基本形は「主食+主菜+副菜+(汁物)+果物+乳製品」 - 食事の基本形をベースにしながら、栄養摂取の目的によって、ターゲットとなる栄養素を強化する