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【試合前・練習中・日常別】アスリートの水分補給戦略|プロチームを支える管理栄養士が伝授!

2025/04/21

目次

「水分補給ってそんなに大事?」と感じているあなたへ

こんにちは!
これまでプロラグビーチームや高校野球部など、数多くのアスリートに帯同してきた管理栄養士が、「本当に効果のある水分補給戦略」についてお伝えします。

✔ 試合後に足がつる
✔ 疲れが抜けにくい
✔ 練習中に集中力が切れてしまう

そんな悩みがあるアスリートにこそ届けたい、水分補給の知識と具体的な実践法をまとめました。

水分補給=アスリートの生命線!4つの役割

① 体温調節

運動時に上昇する深部体温。実はパフォーマンス低下や集中力の低下にもつながります。試合後半、スプリントが効かなくなる選手の多くが「体温調節がうまくできていない」のです。

➡ ポイント:試合前のプレクーリング(アイススラリーなど)を活用!

② 脱水の予防

体重の2%の水分を失うと、集中力やスキルが低下。痙攣リスクもアップします。
「のどが渇いた時点で、もう遅い」──この言葉を覚えておいてください。

③ 熱中症予防

高温多湿な夏場、最悪の場合は命にも関わる熱中症。
「飲むタイミング」と「飲むものの種類」が予防のカギです。

④ リカバリー&体の機能維持

筋肉の75%は水分!
水分が不足すれば、筋出力の低下や疲労回復の遅れに直結します。

フットボールの科学 2021 vol16. No.1 暑熱環境下におけるスポーツでの暑さ対策:長谷川 博(広島大学大学院)

競技をサッカーの練習中における深部体温の変化のグラフが以下の通りです。

競技者のための暑熱対策ガイドブック(ハイパフォーマンスセンター)

競技者のための暑熱対策ガイドブック(ハイパフォーマンスセンター)

❄️ 試合前の「冷却ドリンク活用術」:アイススラリーで深部体温を調整!熱中症の対策にも◎

🔸 アイススラリーとは?

「細かい氷の粒が混ざった冷たい飲み物」のことで、
競技前に摂取することで体内から深部体温を下げることができます。
この方法は「プレクーリング(事前冷却)」と呼ばれ、暑熱環境下でのパフォーマンス維持に非常に有効です。

🧊 アイススラリーの作り方と飲み方

  • 冷凍庫で約4時間凍らせる
  • 飲む15〜20分前に常温に出しておく
  • 手でもんで、柔らかくしてから飲む

ポイントは、飲むだけでなく「持つ・触れる」ことでも冷却効果があるということ。
冷たい容器を持っているだけでも、体表面の温度を少し下げる効果があります。

🧊 アイスバスやアイスベストも有効、だけど…

試合前のクールダウンとしては、アイスバスアイスベストといった方法も有効ですが、
試合中やハーフタイムに「氷風呂に入る」わけにはいきませんよね。

だからこそ、水分補給のタイミングと内容がカギになります。

💡 現場で実践できる!体温コントロール法

  • ハーフタイムなどの短い時間でも、冷たいドリンクで内側から冷却
  • 練習や試合前後、こまめな水分補給で深部体温の上昇を抑制
  • 暑熱環境下では、導線に保冷BOXや冷却ゼリーを常備しておくのがベスト!

暑い環境では「体温の上昇=パフォーマンスの低下」につながります。
試合前からの冷却戦略、水分補給と併せて「プレクーリング」の視点も取り入れていきましょう!

実際に、ラグビーチームに帯同していた時には、選手が通る導線状に何箇所か、トレーニング前の「準備」に必要な補食や飲料を設置してました。こちらの写真は、グラウンドに入る入り口です。体の痙攣予防のために必要なドリンクと30℃を超える日の練習時には、凍ったエネルギーゼリーと普通のエネルギゼリーと2種類用意してました。

アスリートが適切な水分補給戦略を持ち、実践していくことは、「パフォーマンス維持」だけでなく、「体を守る」ことにおいて、必要不可欠で、選手のスキルの1つだと考えています。今一度、水分補給戦略について、一緒に考えていきましょう。

水分不足がもたらす、パフォーマンスへの影響

水分不足は、体内の水分量が不足している状態を指し、これを「脱水症状」とも呼びます。脱水によって、「パフォーマンス低下」につながるだけでなく、筋肉の75%は水分でできているので、「Soft Lean Mass(体重から体脂肪や骨・ミネラルを除いた部分)」の減少(筋肉量の減少に近いニュアンス)、「リカバリーの妨げ」にもつながります。

脱水はパフォーマンス低下に直結

脱水によって、体の中では、パフォーマンス低下につながる様々なネガティブな症状が現れます。レベルによって、症状は変わりますが、軽いものから、最悪命を失ってしまう重篤なものまであります。

DNS ZONE 水分補給とパフォーマンス

💧 体重の1%水分減少で「脱水のサイン」が出始める

体重の 1%分の水分 を失うと、
次のような症状が現れ始めます:

  • 発汗量の増加
  • 喉の渇き
  • 口の乾燥

これらは 「脱水のはじまりのサイン」 です。
この段階ですでに、水分補給のタイミングが 遅れている または 摂取量が不足している 可能性が高いです。

我慢すれば続けられる選手も多いかもしれませんが、
この時点で、パフォーマンスの低下は始まっていると考えてください。
できるだけ早く、水分補給を行いましょう。

🚨 体重の2%水分減少で「本格的な脱水」状態に

体重の 2%近く水分を失う と、
本格的な「脱水」となり、以下のような症状が顕著になります:

  • 頭痛やめまい
  • 集中力・判断力の低下
  • スキルレベルの低下
  • 心拍数や体温の異常な上昇

研究データでも、体重の2%の水分減少を境に、
あらゆる能力のパフォーマンス低下が起きると報告されています。

⚠ 筋肉も水分不足に弱い!

  • 筋肉の 約75%は水分でできています。
  • 水分が足りないと、筋肉が正常に機能しなくなり、
    • 痙攣(つる)
    • 筋力の低下
    • 瞬発力の低下
    • 持久力の低下
    • 集中力・判断力の低下

などが起こります。

✅ 水分補給はパフォーマンスを守る最前線!

「まだ大丈夫」と思った時には、すでに脱水が始まっています。
のどが渇く前に、こまめに、少しずつ補給するのが最適です。

⚡ パフォーマンス低下を引き起こす「体の痙攣」とは?

競技中やトレーニング中に「足がつった!」という経験、
アスリートの方なら一度はあるのではないでしょうか?

この状態は、 筋肉の伸び縮みを自分でコントロールできない =「痙攣(けいれん)」です。
筋肉は本来、意図的に伸び縮みすることで力を発揮しますが、
さまざまな要因が重なると、そのコントロールが効かなくなることがあります。

🧠 痙攣の要因はいろいろ。特に注意すべきは「水分と栄養」

痙攣の原因には以下のようなものがあります:

  • 筋肉の蓄積疲労
  • 深部体温の過度な上昇
  • 生まれ持った筋肉の性質
  • トレーニングの強化不足
  • 長時間の運動による 水分・電解質の不足
  • 糖質の不足 によるエネルギー切れ

特に、運動中に大量に汗をかくことで、
ナトリウム(塩分)やマグネシウムなどの電解質が不足すると、
後半に痙攣が起きやすくなります。

🚨 痙攣はパフォーマンスに大打撃!

痙攣が起きると、その瞬間からパフォーマンスはガクンと低下します。
症状が重ければ、競技の続行は難しくなり、途中交代を余儀なくされることも

だからこそ、痙攣を防ぐためには…

  • 前日からの食事・水分補給による「準備」
  • 試合当日・競技中の「水分&電解質補給」戦略

この2つが非常に重要になってきます。

✅ 試合前から始まる「痙攣予防」チェックリスト

私は普段から、試合前に以下のポイントをチェックしています:

  • 前日に水分をしっかり摂れているか?
  • 電解質(ナトリウム・マグネシウムなど)を含む食事が摂れているか?
  • 当日の気温・湿度に応じた飲料を準備できているか?
  • 練習や試合中、こまめな水分補給ができる導線は整っているか?

痙攣は「突然起こるもの」ではなく、
実は事前の準備次第で防ぐことができるリスクです。

💧 パフォーマンスを引き出す!効果的な水分補給戦略とは?

アスリートにとって、水分補給は「パフォーマンスを守る盾」であり、「力を引き出す鍵」でもあります。
その戦略を立てるうえで重要なのは、この3つの視点です:

✅「何を」「どれくらい」「いつ」摂取するか【タイミング重要!】

私は、水分補給も食事と同じように「タイミング」を重視しています。
パフォーマンスを発揮したい時間帯から逆算して、
その時の体の状態や直前の準備内容に応じて、
不足しているもの・優先すべきものを見極めながら、飲むものを選びます。

🕒 水を飲んでも、すぐ効果は出ません

水分は、飲んだ瞬間からすぐに全身に効果を及ぼすわけではありません。
飲んだ水は小腸で吸収され、全身に運ばれ、細胞が潤うまでには20〜30分かかります。

つまり、
「喉が渇いた」時点での水分補給は遅い
=パフォーマンスの低下を招きかねません。

さらに、1度に吸収できる水分量はコップ1杯(200〜250ml)程度。
それ以上は尿として排出されてしまう可能性が高いのです。

🚫 NG例:喉が渇いてからの一気飲み

「喉が渇いてから、がぶ飲み」はNG!

一気に飲んでも体がすべて吸収できるわけではなく、
脱水状態の解消にはつながりません。

パフォーマンス維持のためには、
「こまめに、ちびちび」飲む
これが鉄則です。

💡特に暑い日は、「15〜20分ごとにコップ1杯」が目安!

🧴 シチュエーション別に飲み物を選ぶ!

水分補給といっても、
水、お茶、スポーツドリンク、経口補水液など…いろいろありますよね。

選ぶ基準は、「今の体に何が必要か?」

飲む目的に応じて、使い分けるのがポイントです。

💡シーン別 おすすめドリンク一覧(参考)

シーン飲み物理由・特徴
練習・試合中スポーツドリンク糖質と電解質が補給でき、エネルギー維持に◎
脱水が心配なとき経口補水液ナトリウム補給+素早い吸収でリスク回避
日常(起床後/入浴前)水・麦茶常温で吸収よし、胃腸の負担も少ない
リカバリー時味噌汁・スープ水分+塩分+ビタミン類を一気に補給できる優れもの

📈 戦略に必要な3つの要素

  1. 目的(エネルギー?塩分?単純な水分?)
  2. タイミング(練習前?試合中?リカバリー時?)
  3. 摂取量(200mlずつこまめにが基本)

これに加えて、
**「どこで飲むか」**という導線設計も大切です。
例えば、ボトルの置き場所、補給の声かけ、冷やし方など、
チームや個人でルールを作ると、補給の習慣が自然と身につきます。

🍽 食事も「水分補給」の一部!

意外と見落とされがちですが、
食事も立派な水分補給の手段です。

特に野菜・果物・汁物・炊きごはんなどには多くの水分が含まれています。

💡味噌汁1杯は、実は経口補水液と同じくらいの塩分濃度なんです!

つまり、朝ごはんで「味噌汁」を飲むだけでも、
脱水対策としては非常に効果的なんです

【チェック項目あり】今すぐ実践できる!水分補給戦略

🔹 朝起きたらまずコップ1杯

寝ている間に200〜500ml失っています。朝食とあわせてスタートを整えよう。

🔹 練習・試合前は30分前に1度水分補給

吸収までに20〜30分かかるので、「のどが渇く前」が鉄則。

🔹 練習中は15〜20分に1回、200mlずつ

一気飲みはNG。こまめに、ちびちびと。

🔹 練習前後で体重を測ろう

減少率が2%を超える=脱水の可能性大。リカバリーの水分量も逆算できます。

1日のスケジュールを考慮した水分補給戦略

🧊 飲み物の「温度」も水分補給戦略のひとつ!

水分補給は「何を飲むか」だけでなく、**「温度」**も重要な要素です。
体の状態や環境に合わせて、適切な温度の飲み物を選びましょう。

❄️ 冷たい飲み物(5〜15℃):体温を下げたいときに最適

暑熱環境下や、体温が上がっているときには、**冷たい飲み物(5〜15℃)**がオススメです。

  • 胃にとどまる時間が短く、小腸からの吸収が速い
  • 体温の上昇を抑える効果が期待できる

ただし、2℃以下のような極端に冷たい飲み物はNG
胃腸が冷えて、お腹の不快感や下痢などにつながるリスクがあるため、注意が必要です。

💡試合や練習中は「5〜15℃」くらいの冷たい飲み物が理想的です。

🌿 常温の飲み物(20〜35℃):日常生活や寒くない季節におすすめ

  • 胃腸への負担が少なく、安心して飲める
  • 体温の変化も小さく、体が冷えにくい

日常生活や春・秋のような穏やかな季節では、常温がベストです。
特に朝や食事中、入浴前後などに取り入れましょう

🔥 温かい飲み物(60〜80℃):胃腸にやさしいが、吸収はゆっくり

温かい飲み物は、最も胃腸にやさしい反面、
吸収にはやや時間がかかるため、パフォーマンスを発揮したい直前には不向きです。

  • 冬や寒い日のリラックスタイムに
  • 就寝前の水分補給にもぴったり

「量を飲むのがしんどい」と感じることもあるかもしれませんが、
リカバリーの一環として、活用していきましょう。

🚽 脱水チェックの味方!「尿の色」でわかる水分状態

練習前後の体重測定に加えて、日常的にできる簡単な脱水チェックとして、
「尿の色」の確認がとても有効です

💡「尿の色」は、体内の水分バランスのサイン

「URINE COLOR CHART(尿色チャート)」を参考に、以下のように判断しましょう。

尿の色状態対応策
透明〜薄い黄色水分バランスが良好現状キープ!
濃い黄色以上脱水状態の可能性が高いすぐに水分補給を!
茶色・赤みがかっている脱水が進行している or 体調不良医療機関の相談も視野に入れて

☀️ 起床後の尿は、基本的に「濃い色」

就寝中は汗をかいて水分が失われるため、起きた直後は脱水気味のことが多いです。
まずは、コップ1杯の水から1日を始めましょう。
これが、「パフォーマンスを高める1日の第一歩」になります。

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🎯 最後に:水分補給もアスリートのスキルの1つ

水分補給は「気合」ではなく「戦略」。

  • 体を守り、パフォーマンスを引き出す
  • 「何を・どれだけ・いつ飲むか」を意識
  • 食事も含めて、水分補給戦略を設計する
  • 習慣化がカギ!まずは1つ、今日から実践

「水分補給は感覚じゃなく、戦略的に」

ライバルに差をつけたいアスリート、チームでのパフォーマンスアップを目指す指導者の方、
ぜひ、あなたの水分補給戦略を一緒に設計していきましょう!

これらを計画し、習慣化することで、
ライバルに差をつける「見えない力」が手に入ります。

水分補給は、「やれば結果がついてくる」スキル。
明日から、まずは“朝の1杯”から始めてみませんか?

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